作者が1位? 3話目で? ジャンプマンガの「人気投票」で起きた珍事件集
マンガのファンにとって、キャラクターの「人気投票」は一大イベントです。自分の推しを1位にするために、情熱を注ぐ人も少なくありません。しかしときには、その愛情が暴走してしまうこともありました。
後世に残る(?)チョコ6万個事件
人気マンガには、キャラクターの人気投票がつきものです。それに臨むファンの意気込みは相当なもので、ときに思いもよらない結果を引き起こすことも珍しくありません。今回は、「週刊少年ジャンプ」で連載されていたマンガから、並々ならぬ熱意が生んだ「人気投票の珍事件」をご紹介します。
●『テニスの王子様』
マンガ『テニスの王子様』は、絶大な女性人気も誇る作品です。それゆえに、ファンにとってバレンタインデーは一大イベントでもありました。というのもテニプリ界隈では人気投票と同じく、各キャラクターに送られたチョコレートの数が競われていたからです。
そのランキングにおいて、長らくトップをひた走っていたのが、氷帝学園3年生の跡部景吾でした。2006年のバレンタインから2016年まで、1年の休戦を挟みつつも10連覇を成し遂げています。
しかし2014年のバレンタインで、あるピンチが訪れました。作者・許斐剛先生の公式X(旧Twitter)にて、青春学園3年生の不二周助に8000個ものチョコが届いたという報告があったのです。先生の報告により跡部の1位を確信していたファンは騒然とし、こぞって彼宛のチョコを送ったのでした。その結果、それまで多くても1万個に及ばなかったチョコの数が、6万2837個も集まる(2位の不二は3万9373個)という驚愕の記録を打ち立てたのです。
ちなみにファンのあいだでは、跡部にチョコを送ることは、「納税」として義務化されています。その忠誠心ゆえに、「10連覇」という偉大な結果を残すことができたのかもしれません。
●『世紀末リーダー伝たけし!』
本来、人気投票とは作中キャラクターに対して行われるものですが、ギャグマンガ『世紀末リーダー伝たけし!』では、作者である「しまぶー」こと島袋光年先生が1位になるという珍現象が起こりました。
そもそも島袋先生は本人役で作中にたびたび登場していたため、第1回、第2回の人気投票でともに上位にランクインし、メインキャラに勝るとも劣らない人気ぶりを見せています。それに気をよくしたのか、第3回目の人気投票を「6位の奴が1位」という特殊ルールのもとで開催すると宣言しました。
島袋先生が1位になりたいがために設けられたルールだったのですが、かえって1位にさせまいと読者の闘争心に火をつけてしまったようです。その結果、島袋先生に投票が集中してしまい、第3回の人気投票は主人公を抑えて、島袋先生が1位にランクインしました。
●『ボボボーボ・ボーボボ』
ファンの熱意によって騒動が起きたわけではないものの、人気投票の珍事件を紹介するうえで『ボボボーボ・ボーボボ』を語らないわけにはいきません。同作は突拍子もないギャグのオンパレードで人気を博した作品ですが、それだけでなく想像の斜め上をいくキャラクター投票で読者の度肝を抜いています。
それが、第3話で発表された人気投票の結果でした。「連載3回突破記念」という珍妙な主旨のもと、ランクインした全員が主人公のボボボーボ・ボーボボという高度なギャグが披露されたのです。もちろん結果も書かれている得票数もフィクションで、実際に人気投票が実施されたわけではありません。
しかし、読者に与えたインパクトは相当なものだったようです。このネタは2001年に掲載されたものですが、後のマンガ界に絶大な影響を与え、約20年の時を経て『呪術廻戦』や『マッシュル-MASHLE-』など、さまざまな作品でパロディされています。当時のファンが漫画家となり、『ボボボーボ・ボーボボ』のエッセンスを受け継いでいると考えれば、感慨深い現象といえるのではないでしょうか。
なお正真正銘の人気投票では、首領パッチが常に1位でした。主人公であるボーボボは1位になったことがなく、なんとも皮肉なギャグとなっています。
ただ、2020年には、「少年ジャンプ+」にてネタにあやかったボーボボばかりがエントリーする(他キャラには投票できない)人気投票が実際に開催され、トータルで約74万票もの票数を集めていました(1位のボーボボは14万7817票獲得)。この数からも、同作の人気投票ネタがどれだけ愛されているかが伝わってくるでしょう。
(ハララ書房)