和製サンダーバード? 高橋良輔、富野由悠季らが参加した本格SFアニメ『ゼロテスター』企画秘話
謎のデザイナー「ジョン・デドワ」とは

「サンダーバードをモデルに」という東北新社の当時の上層部の言葉通り、分離合体する戦闘機の1号機から始まり、戦闘母艦基地の2号機、水中活動を行う3号機、巨大なコンテナで輸送を担う4号機……と、その構成はかなりサンダーバードを意識したものになっています。これは、当時のスポンサーであった「ポピー」の「ポピニカ」という玩具のラインナップも意識したものですが、これらのメカをデザインしたのは、ジョン・デドワなる人物。
当初、これは、サンダーバードを制作したイギリスの映像会社のデザイナーだと言われていました。しかし、実際のデザイナーは別人なのです。
デザインを担当したのは、アニメやSFファンの間では著名なSFクリエイター集団「スタジオぬえ(当時はクリスタルアート名)」のデザイナーをはじめとする日本側のスタッフたちでした。これは『ゼロテスター』の企画制作の最前線にいた、後のサンライズの企画部長で三代目の社長でもあった私の上司から直接聞いた話です。
確かに『ゼロテスター』の企画時には、東北新社の方からイギリス側に打診をしたそうです。しかし、あまり色よい返事を得ることが出来ず、それならばと、企画初期のラフデザインに加え当時新進気鋭の「スタジオぬえ」にも白羽の矢を立てたのです。
では、なぜジョン・デドワなのか。
「その方が箔が付く」から。海外デザインというイメージアップを狙ったという、なんとも単純で驚きの理由だったようです。要するに、ジョン・デドワは、東北新社側で考えたペンネームのようなものと考えるのが正しいのです。
今聞くと「それでいいのか!?」と思いますよね。しかし、それが暗黙の了解で通ってしまうというのが50年前のテレビ業界だった……ということのようです。
私が話を聞いたおりは、イギリス側に、本当にジョン・デドワという名前の人がいたようなニュアンスも感じましたが、その人物が実際にイギリスのデザイナーであったかなどもはっきりしません。いずれしても『ゼロテスター』に登場するさまざまなメカは、すべて日本側でデザインされたことに間違いはありません。
あれから50年。具体的な真実を知っているはずの方々は、もはや残念ながらこの世にはいらっしゃらず、このデザイナー名の経緯について確証を得ることは不可能でしょう。しかし、そんな彼らの努力?の末に出来上がった番組が、半世紀後の今も私たちを楽しませてくれているのですから、それこそ「ゼロからスタートしたサンライズ」の挑戦の答えが、今、ここにあるのかもしれません。
(風間洋(河原よしえ))
【著者プロフィール】
風間洋(河原よしえ)
1975年よりアニメ制作会社サンライズ(現・バンダイナムコフィルムワークス)の『勇者ライディーン』(東北新社)制作スタジオに学生バイトで所属。卒業後、正規スタッフとして『無敵超人ザンボット3』等の設定助手、『最強ロボ ダイオージャ』『戦闘メカ ザブングル』『聖戦士ダンバイン』『巨神ゴーグ』等の文芸設定制作、『重戦機エルガイム』では「河原よしえ」名で脚本参加。『機甲戦記ドラグナー』『魔神英雄伝ワタル』『鎧伝 サムライトルーパー』等々の企画開発等に携わる。1989年より著述家として独立。同社作品のノベライズ、オリジナル小説、脚本、ムック関係やコラム等も手掛けている。







