【インタビュー】巨匠・池上遼一氏の画集が刊行「格好のいい男、素晴らしい美女描きたい」
社会や時代に抗うような、強い女性に惹かれていた

――男前のキャラクターの存在を引き立ててくれるのが、美しい女性たちです。可憐な少女から妖艶な大人の女まで、さまざまな女性を描く池上遼一さんは「劇画界一の絵師」と呼ばれています。
池上 実は、僕自身は「絵師」と言われるのはあまり好きではありません。僕が描きたいのは、ストーリーの中で活躍する女性たち。美人画の名手、竹久夢二が描くような、たおやかな女性にはあまり興味がないんです。気性の強い、自意識をしっかり持った女性に惹かれて描いてきました。
画集の〈女編〉には、近松門左衛門の浄瑠璃『心中天の網島』にインスパイアされて描いた作品が掲載されています。紙屋の治兵衛と遊女/小春は、不義密通の果てに道行になっていきます。ふたりの想いを成就するために、あえて社会に反していく強さがある。愛を貫き通して死んでいくわけですから、それも「女の強さ」だと言えるのではないでしょうか。
――「強い女」といえば、画集の〈女編〉には『修羅雪姫 外伝』のために描かれた原画も収録されています。小池一夫さんが原作を、上村一夫さんが作画を手掛けた劇画の名作を描き継いだ作品です。
池上 上村一夫先生の『修羅雪姫』のキャラクターに憧れて、僕も雪を描きました。舞台は明治時代の日本。生まれながらにして「復讐」という定めを負い、監獄で育った雪。彼女が母の仇を討った「その後」を描いています。
明治から昭和初期までの時代を振り返ると、世間からは妖婦・毒婦と言われるような「気性の強い女性」が起こした事件が多い。まだ、女性の存在がないがしろにされていた時代ですから、男性社会への抵抗だったのかもしれませんね。こういう劇的な時代を舞台にした、強い女性の物語にも魅力を感じます。

――最後に、画集の見どころを教えてください。
池上 大型サイズで、全ページカラー印刷の画集です。コミックスではわからない、絵具や墨ベタの濃淡、ペンタッチまで楽しんでいただけます。通常は、製本時に裁断されてしまう塗り足し部分や鉛筆線まで、あえて掲載しているページもあります。
近年はパソコンでの作画が中心となっている僕ですが、絵具を塗り重ねた風合いはアナログならではの魅力です。デジタルで制作している若い人たちにも、描き方の参考になるのではないでしょうか。ぜひ、画集を楽しんでいただきたいと思います。
※文中一部敬称略
(取材:メモリーバンク)
(メモリーバンク)
●『池上遼一 Art Works 男編&女編』(玄光社)
2019年11月30日(土)全国発売予定、東京・銀座 蔦屋書店のみ、11月22日(金)より先行販売。
A4変型判、〈男編〉〈女編〉各144ページ、定価4500円+税
https://www.genkosha.co.jp/gmook/?p=20389
●東京・銀座 蔦屋書店『池上遼一 Art Works 男編&女編』画集刊行記念トークショー&サイン会
2019年11月29日(金) 19:00~21:00、銀座蔦屋書店 BOOK EVENT SPACEにて開催。定員60名。
※イベントの内容は変更になる可能性もあります。詳細は銀座蔦屋書店公式サイトをご確認下さい。
https://store.tsite.jp/ginza/event/humanities/10820-1821101103.html













