カラータイマーだけじゃない 子どもたちをハラハラさせた特撮ヒーローの弱点設定3選
特撮ヒーロー史上に輝く大発明「カラータイマー」に続けと言わんばかりに、その後のヒーローには様々な「弱点」が設定されました。そうしたなかから子どもたちが驚くほどの、やり過ぎてしまったありえない弱点3つを見ていきます。
敵の「笛の音」に悶え苦しむヒーローってアリなの?

「ウルトラ」シリーズに登場する「カラータイマー」は、特撮ヒーロー史上最も重要な発明だったといえるでしょう。敵と戦うクライマックスの戦闘シーンに3分という制限時間を設け、リミットが近づくと胸のカラータイマーが点滅することで、ピンチと、それを乗り越えて必殺技を繰り出す逆転劇への伏線が込められていました。
その後「カラータイマーに続け」とばかりに、多くのヒーローに様々な弱点がつくられましたが、なかには、子供たちも首をかしげるありえない設定もあったようです。
それはたとえば、1972年から放送された『人造人間キカイダー』が挙げられるでしょう。同作は、「仮面ライダー」の成功を受けて、同じ石ノ森章太郎先生原作で東映によって制作された特撮変身ヒーロー第2弾です。
悪の組織「ダーク」の「ダークロボット」と下級戦闘用アンドロイド「アンドロイドマン」が暴れているところへ、伴大介さんが演じる主人公「ジロー」がギターをかき鳴らしながら現れ、アンドロイドマンをバッタバッタとなぎ倒します。彼は、ダークに協力させられながらダークの野望を阻止せんとする光明寺博士の作った、人造人間なのでした。
しかし、そこに不穏な笛の響きが……ダークの首領、プロフェッサー・ギルの笛の音です。
ダークのロボットは、笛の音に魅入られると凶暴化してしまうのです。「キカイダー」の人間態であるジローも、「不完全な良心回路(後述)」を持つがゆえに、笛の音により悶え苦しみます。
実際に彼はギルの笛の音に取り込まれて、操られてしまったこともありました。「良心回路」とは、光明寺博士による、ロボットなどの機械が自ら善悪を判断し最善の行動をとるという思考ないし行動を司る「回路」のことで、ジローのそれは不完全なものだったのです。故にジローは「善と悪との葛藤」に苦しめられるという、逆説的に人間くさいキャラクターとなりました。これは、人形なのに人間になりたいと望む「ピノキオ」をモチーフにしているといい、身体は改造人間でも心は完全に正義の心を持つ「仮面ライダー」とはひと味違ったキャラクター像といえるでしょう。
ジローが笛の音により完全に心を奪われる寸前、偶然にもほかの音によって笛の音がかき消され、そしてピンチから脱出したジローが瞬時にキカイダーへ変身する、というのがお約束でした。キカイダーに変身すれば、良心回路も完全なものとなり、笛の音に惑わされることはもうありません。
上述のように、キカイダーは良心と欲のはざまで葛藤する、人間以上に人間らしい人造人間です。変身後のコスチュームは赤と青、そして左右非対称のデザインで、中のメカニカルな様子が見えるスケルトンの箇所もあり、彼の存在の危うさが見事に表現されています。作品の世界観とキカイダーのキャラクター設定がひと目見るだけで伝わり、原作者自ら最高傑作と評していたといいます。
重大な欠陥を抱えながら戦うというヒーロー像には魅力があるものの、、ヒーローがいつ悪に転じるのか分からないという葛藤を抱えていることは、子どもたちにとっては複雑な要素です。悪への誘惑を断ち切ってキカイダーになったときの安心感と爽快感がある一方、ジローでさえ惑わせる悪の恐ろしさにモヤモヤが残ります。
その後、ジローの不安定感を払拭するかのように登場した、ジローの兄イチローを主役とする続編『キカイダー01』は、安定感抜群の典型的なヒーローでした。ジローよりも前に製造された人造人間ということで、複雑な「良心回路」を持っていないため、正義と悪について悩むこともありませんでした。