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23世紀の日本は世界覇者? 「バブル」の片鱗が見える異色作『ゴジラVSキングギドラ』

1980年後半から1990年代前半にかけての日本はバブル景気の真っ只中でした。「ジャパンアズナンバーワン」と言われて、高い技術や好景気で世界中から羨望の目で見られていました。その痕跡を知ることができるゴジラ映画が、平成VSシリーズの1作『ゴジラVSキングギドラ』です。

23世紀では日本が世界の覇権を握っていた?

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 映画『ゴジラVSキングギドラ』は、1991年12月に公開されたゴジラの「平成VSシリーズ」の1作です。本作では設定としてタイムトラベルが取り入れられており、23世紀の未来では日本が世界の覇者となって諸外国を支配していました。

 1986年後半から1991年前半までの時期は「バブル景気」だった日本は、日本経済の黄金期を象徴する意味で「ジャパン・アズ・ナンバーワン」とも呼ばれており、経済的にも絶頂期を迎えていたため、そんな未来を想像してもおかしくない状況でした。

『ゴジラVSキングギドラ』の作中では1992年頃、日本政府の前に突如として23世紀の未来人、ウィルソン、グレンチコ、エミー(主人公・日本人)の3人がやってきてきます。

 ウィルソンたちは日本政府に対して、1944年にタイムトラベルしてゴジラの前身である「ゴジラザウルス」が核実験によって放射能を浴びることを回避するように持ちかけます。彼らの話では、ゴジラによって23世紀の日本は壊滅状態だというのです。日本政府は未来人たちの話を信用し、選抜メンバーが未来人とともに1944年にタイムトラベルします。

 選抜メンバーは予定通りゴジラザウルスを遠くへ逃がし、放射能汚染を回避します。無事ゴジラの出現を回避したものの1992年に戻った日本にはキングギドラが出現し、大暴れしていました。1944年に未来人が送り込んだ、遺伝子操作によって生まれた生物「ドラット」が3体が放射能を浴びて合体し、キングギドラに変異していたのです。

 そもそも未来人たちの狙いは日本を破壊することで、23世紀の日本はアメリカ、中国をしのぐ大国になって世界を支配していました。欧米の未来人は過去を塗り替えるために「ゴジラによる日本壊滅」という嘘をつき、ゴジラ誕生を阻止したうえで自分たちがコントロールできるキングギドラを誕生させ、未来で世界の覇権を握る日本を弱体化させようとしていたのです。

 1970年代から1980年代は、性能に優れた日本製に押されたアメリカが日本車の輸入規制をするなど、「ジャパン・バッシング」もありました。ウィルソンたちの正体は国家間の極端な力の差をなくすことが目的の未来の組織「地球均等環境会議」でしたが、日本人に嫉妬して妨害する欧米人という構図はまんざら絵空事でもありません。

 また「邪魔な敵を排除するために、過去に行って敵の誕生を阻止する」という設定は、同年8月に公開された『ターミネーター2』などの「ターミネーター」シリーズの影響を受けたのかもしれません。

 作品にその名残こそあるものの、映画の公開時にはすでにバブルは崩壊しており、そこから日本は「失われた30年」といわれる経済の衰退を味わっています。また、『ゴジラVSキングギドラ』で説明された未来は、21世紀末に地球上から核兵器が全て破棄されたために、各国は武力で日本の暴走を抑えられなくなったとのことでした。

『ゴジラVSキングギドラ』は約30年前の「懐かしくなる未来像」も味わえる、異色のゴジラ映画です。『ゴジラ-1.0』の大ヒットで、今後国産のゴジラ映画を続々と作る流れになるかもしれませんが、ぜひまた「タイムトラベル」要素が出てくる作品も見てみたいものです。

(LUIS FIELD)

【画像】後にキングギドラになる? 『ゴジラVSキングギドラ』に登場した3体の「ドラット」はカワイイけどちょっと「哺乳類」っぽい?

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