SIEの「PS5」戦略は好調?それとも黄色信号? 2024年の成功を握るカギとは
PS5の躍進を後押しするのは、カプコンか?
●独占タイトルの少なさ、実質値上げに対する買い控えの可能性
また、PS5本体の売れ行きですが、全体の販売台数は出ているものの、日本国内の普及台数などは明かされていません。累計で売れていれば問題ないと考えるのはやや乱暴ですし、日本のユーザーからすれば国内のPS5が盛り上がるかどうかは死活問題です。
ハードに加えて、ゲームソフト面でも懸念する材料はあります。PS5独占としてリリースされる作品は数あれど、後日PCなどに展開するケースがほとんどで、先ほど名前を挙げた『FINAL FANTASY XVI』もPC版のリリースが決まっています。「PS5だからこそ」というゲーム体験がまだ乏しい点は、いささか否定できません。
そして先日新モデルのPS5が発売されましたが、こちらの価格は従来モデルよりも上がっています。しかも従来のモデルは在庫限りで販売が終了するので、実質的な値上げと言っていいでしょう。小型化やSSDストレージの増量などはあるものの、価格面で買い控えを決めるゲームファンが出てきてもおかしくありません。
良好な数字もあれば、見過ごすには大きな課題もあり、そして不透明な部分も気になります。そのため現時点では、「SIEのPS5戦略は、万事上手く進んでいる」とは断言できません。
●PS5に求められるさまざまな「展開」
もうじき2023年が幕を閉じます。リリースされるPS5タイトルはほぼ確定しており、年内にこの状況が即一変することはまずありません。そのため、今後のPS5戦略で重要なのは2024年の展開です。果たしてどのような動きがあれば、ユーザーが抱える不安を払拭し、非の打ちどころのない飛躍を遂げられるのでしょうか。
普及が見えにくい国内のPS5販売台数ですが、値下げを行えば一定の効果が出る、と指摘する声もあります。確かに、値下げで普及が進んだ例はありました。ですが、円安の改善は未だ見込めず、また新モデルで実質的な値上げが行われたばかり。2024年内に効果のある値下げが実施される可能性はかなり低いでしょう。
また同じ理由から、PS+の値下げも見込み薄ですが、内容の充実は十分あり得ます。ただしプレミアムコース加入者向けに、クラウドストリーミングや「Sony Pictures Core」アプリ経由の映画見放題といったサービスの拡大を行ったばかりなので、早急な新展開は少々難しいかもしれません。
PS5独自の強みを生かす、という方向性も考えられます。PS5にアクセスできる「PlayStation Portal」も強みのひとつと言えますが、ここは「PlayStation VR2」への注力に期待したいところ。しかし周辺機器の展開は、どちらかと言えばPS5所持者向けなので、現状の打開まで求めるのは荷が重そうです。
やはり王道は、ゲーム機の購入を後押しする「キラーソフト」の創出でしょうか。昨年は『ゴッド・オブ・ウォー ラグナロク』が大ヒットを記録し、今年は前述の『Marvel’s Spider-Man 2』がまさに活躍中です。こうしたヒット作に続くゲームを2024年に出せるかどうかが、ひとつのカギになるでしょう。
●カプコンの意味深な発言が、PS5に結びつくのか?
PS5が成功するためのキラーソフトの創出は、必ずしもSIEが全て背負う必要はありません(自社IPが育つのは大きな強みになりますが)。PS5に参入しているソフトメーカーに、できれば独占で、せめて時限独占のPS5ソフトを出してもらえれば、それを機にPS5の普及がさらに進みます。
来年登場するPS5独占ソフトといえば、『FINAL FANTASY VII REBIRTH』に大きな期待が集まっています。本作は、人気の高い『FINAL FANTASY VII』をベースに、新たな切り口も加えてリメイクする3部作の2作目です。
あのさまざまなミニゲームが楽しめる「ゴールドソーサー」にも足を運べますし、ファンお馴染みのデートイベントも用意されています。PS5の性能をたっぷり味わえる、絶好の1本と言えそうです。
また、PS5と関連するのかはまだ未定ですが、カプコンから気になる発言が飛び出しています。同社の2024年3月期 第2四半期カンファレンスコールの質疑応答概要にて、「通期の新作タイトル販売計画の達成に向けた施策を伺いたい」と問いかけられ、「下期は、現在未発表の大型タイトルに加え、1月に『逆転裁判 456 王泥喜セレクション』の投入を予定しています」と同社が返答。未発表の大型タイトルが、来年3月までに控えていると明言しました。
「カプコンの大型タイトル」から連想される作品はいくつもありますが、その候補のひとつとして確実に名が挙がるのは、『モンスターハンター』シリーズでしょう。このシリーズはさまざまなプラットフォームでヒットを記録し、ゲーム機の販売台数にも貢献するほどの影響力を持ち併せています。
仮に『モンスターハンター』シリーズの新作がPS5独占で出れば、PS5にとってこれ以上ないほどの追い風となります。しかも『モンスターハンター』シリーズは、2024年3月に20周年を迎える予定です。このタイミングに新作を投入する展開は十分あり得るので、「PS5にモンハンの新作」の可能性はゼロではありません。
『モンスターハンター』シリーズはあくまで一例ですが、これに比類するほどのタイトルがPS5に登場するのか否か。ここが、2024年のPS5戦略を左右する大きな分岐路となるはず。SIEはユーザーが期待するような、もしくは上回るような戦略を見せてくれるのか、今後の動きに視線が集まります。
(臥待)