マグミクス | manga * anime * game

こんなに辛いなら変身したくない! 理不尽な扱いを受ける特撮変身ヒーロー3選

特撮変身ヒーローのなかには、悪と戦っているにもかかわらず、まったく周囲の理解を得られないという、なんともつらい境遇のヒーローもいました。70年代特撮作品のなかから、同情を禁じえないヒーローたちを見ていきます。

みんなの憧れ……ではない!? つらすぎる境遇のヒーローたち

「放送開始45周年記念企画 甦るヒーローライブラリー 第24集 シルバー仮面 Blu-ray Vol.1」 (C)宣弘社
「放送開始45周年記念企画 甦るヒーローライブラリー 第24集 シルバー仮面 Blu-ray Vol.1」 (C)宣弘社

 特撮変身ヒーローは常に孤独なもの、それでも信頼してくれる仲間や助けを求める人々のために日夜、戦い続けます。しかし、ときには仲間から非難され、人々に後ろ指をさされるヒーローもいました。

 1971年に放送された『シルバー仮面』は、そのような気の毒すぎる変身ヒーローのひとりです。

 光子ロケットを開発した春日博士が設計図を狙うチグリス星人に殺され、父から設計図を託された春日五兄妹は光子ロケットの秘密を求めて全国を流浪することになります。このことを予期していた春日博士は、兄妹たちそれぞれに宇宙人へ対抗できる武器を与えており、なかでも次男の光二は改造人間「シルバー仮面」となって、敵である異星人と戦うのでした。

 兄妹が行く先々で異星人が現れるため、周囲の人々が犠牲になり、巻き添えを避けるため博士の盟友でさえも兄妹を邪険に扱います。また問題の異星人は普通の人間になりすまし街に溶け込んでおり、これを三男の光三が持つ「スペクトルメガネ」で見抜くのですが、当然、一般人に見分けることはできないので、兄妹の戦いは周囲の誰にも理解されるものではありませんでした。

 番組開始当初は等身大ヒーローでしたが、あまりにも地味な内容だったためかてこ入れがおこなわれ、第11話から『シルバー仮面ジャイアント』と改題し巨大ヒーローものに方向転換します。これが功を奏したのか視聴率は伸びたといい、番組は無事、予定の26話までを放送して終了しました。ただこの巨大化てこ入れ策については「本来の魅力を失った」と感じるファンも少なくなかったそうです。

 同じく1971年にTV放送された『鉄人タイガーセブン』も、実に気の毒なヒーローが描かれ、さらに変身ヒーローもののタブーに踏み込む作品でした。

 通常のヒーローものでは憎むべき存在として悪の組織が登場し、これが社会ないし人類の敵として広く認知されますが、本作における悪の組織であるところの、日本征服をたくらむ「ムー一族」の存在を知っているのは、正義側の組織である高井戸研究所のメンバーだけです。研究員は異常者扱いされ、警察の協力もないまま、孤独な戦いを強いられます。主人公で、「タイガーセブン」に変身する能力を得た剛も、力のことは研究員にも秘密にしたまま戦いに身を投じていきます。

 ムー一族の送り込むムー原人が一般人を襲ったときも、近くにいた剛が警察や被害者家族から真っ先に疑われるなど、彼ら研究所の活動が社会に受け入れられることはありません。ただその程度はまだ序の口で、人を襲っていると誤解されて背中を銛(もり)で刺されたり、原人から「タイガーセブン」は悪だと洗脳された子どもの罠にかかったりと、散々な目にあっていくのです。バイクの運転中に原人から襲われたときは、子どもが巻き添えで大怪我をし、その母親に恨まれました。

 さらに、仲間であるはずの先輩研究員、北川からも、「原人が現れたとき逃げた」と非難されます。「タイガーセブン」として戦っているとは、口が裂けても告白できない状況でした。これがたとえば「ウルトラ」シリーズの主人公であれば、怪獣との戦いの後にひょいと現れて、笑って見過ごされていましたが、『タイガーセブン』では見逃されることなく徹底的に追求されたのです。

 仲間に疑われてまで何のために戦うのか、分からなくなった剛は戦線離脱するものの、あと2日で人工心臓が止まると知って、ムー一族との最後の戦いに臨み、勝利の後、静かに仲間の元を去っていきます。特撮ファンの記憶に刻まれる、やりきれないラストでした。

【画像】あえて残したというアストラの「左足の鎖」をチェックする(3枚)

画像ギャラリー

1 2