「覇権アニメ」は意図的に作り出されたもの? 注目すべき「デザインされたヒット」
アニメにはしばしば高い人気を獲得する「覇権作品」が現れます。かつては自然発生的に生まれることが多かった「覇権作品」ですが、近年は「デザインされたヒット作」も増えてきています。アニメの世界でいま、何が起こっているのでしょうか。
「覇権作品」が予測しやすくなっている?
2023年11月、アニメ『進撃の巨人』がフィナーレを迎えました。2009年から「別冊少年マガジン」で連載開始し、2013年の初アニメ化の際には大きな社会的ムーブメントを巻き起こし、以降10年の間に原作全編がアニメ化されるという偉業を成し遂げました。
『進撃の巨人』ほど長期間にわたって人気を集める作品は、「ドラゴンボール」シリーズや『ONE PIECE』など、ごく一部の例外を除けばさほど多くはありません。それでも高い人気を獲得する作品は毎年複数登場しています。
この2023年も、11月現在放送中の『葬送のフリーレン』や『薬屋のひとりごと』、春先には『【推しの子】』、2022年から引き続き話題を集めた『機動戦士ガンダム 水星の魔女』など、多くのアニメが覇権作品と呼ばれました。
あまりにも膨大な数のアニメが放送されているなかで、全体的なクオリティも高まっているのは恐ろしさすら感じますが、『進撃の巨人』が最初に放送された10年前と比較すると、近年は人気を獲得する作品を(ある程度ですが)予想できるようになっています。その理由は簡単で、ヒットを期待されている作品の放送前プロモーションが非常に強力になっているからです。
近年、アニメは海外配信の増加により経済規模が飛躍的に増大し、以前よりも大きな利益をあげるビジネスになりました。その結果、プロモーションも手が込んだものとなっています。
『進撃の巨人』では、最終回放送直前企画としてNHKの「プロフェッショナル 仕事の流儀」で番組史上初となるアニメ主人公へのインタビューとして「エレン・イェーガー スペシャル」が放送され、大きな話題となりました。
『葬送のフリーレン』も、1話が初回2時間スペシャルとして「金曜ロードショー」で放送され、『推しの子』も1話90分拡大版が全国劇場で先行上映されるなど、アニメ放送の新たな形を模索しつつ注目を集める動きが目立っています。
言ってしまえば、「覇権作品を作り出す」形が出来上がりつつあるのです。