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「覇権アニメ」は意図的に作り出されたもの? 注目すべき「デザインされたヒット」

覇権作品が「生み出される」流れとは?

2022年秋『ぼっち・ざ・ろっく』楽器を始める人が続出 TVアニメ『ぼっち・ざ・ろっく!』ビジュアル (C)はまじあき/芳文社・アニプレックス
2022年秋『ぼっち・ざ・ろっく』楽器を始める人が続出 TVアニメ『ぼっち・ざ・ろっく!』ビジュアル (C)はまじあき/芳文社・アニプレックス

 もちろん、覇権作品を作り出すのは口で言うほど楽ではありません。優れた原作やオリジナル企画、力あるアニメ制作スタッフ、熱意あるプロモーター、それにお金といった、貴重な資産や人材を潤沢に注ぎ込む必要があります。簡単に集められるものではありませんし、そこまでしても失敗する可能性が付きまといます。

 しかし、アニメビジネスの拡大を背景に、同様の動きは加速するでしょう。10月末に開催されたアジア最大級の映像コンテンツマーケット「TIFFCOM 2023」で東映アニメーションが開催したセミナーでは、同社の作品群が生み出す市場規模はすでに12兆円規模になるとみられていることが明らかになりました。

 東映アニメーションは『ドラゴンボール』や『ONE PIECE』といった世界規模で人気があるロングヒットコンテンツを抱えており、すでに海外の売り上げが全体の6割に達しているといいます。スタッフをそろえて高いクオリティの作品を生み出し、適切なIP管理を行い、大々的なプロモーションを打つことにより、ヒットを積み重ねる。そうしてあげた利益を原資として、さらに高いクオリティの作品を生み出す流れは、よほどのことがない限り止まることはないでしょう。

 もちろん上記のような「デザインされた大ヒット」作品だけが覇権となるわけではありません。一例を挙げれば、2022年に放送された『ぼっち・ざ・ろっく』は、事前のプロモーションはそれほど強力とは言えませんでしたが、極めて高いクオリティの作品として注目を集め、アメリカのメディア「Anime Trending」の年間最優秀賞であるANIME OF THE YEARを受賞するなど、国内外で高い人気を獲得しました。

 あまりに膨大な作品が送り出され続けている現在、良い作品を作れば必ずヒットする、というような甘い状況ではありません。それでも「デザインされたヒット作」と「自然発生的なヒット作」の双方が共存できている今の状況は、日本アニメの今後を占う上で、維持していかなければいけないものではないでしょうか。

(早川清一朗)

【画像】思い出せる? 2020年以降の「覇権アニメ」たち(8枚)

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