宇宙人の声「ワレワレハ…」のルーツ? 50~60年代SF邦画で築かれたそのイメージ
小説や映画、アニメなどあらゆるジャンルの創作物には、数多くの独創的な宇宙人たちが登場します。今回は日本の特撮作品に登場する宇宙人のイメージ、その基礎となった作品を紹介します。
岡本太郎がデザインした宇宙人 『宇宙人東京に現わる』

広大な宇宙にはいまだに多くの謎が存在しています。宇宙の謎のなかでもやはり一番気になるのが、「地球以外の星にも生物が存在するかどうか」ではないでしょうか。我々の宇宙人に対する好奇心を表すように、マンガや小説、『スター・ウォーズ』をはじめとする映画には独創的な宇宙人や宇宙生物が多数登場します。
今回は、日本の特撮作品に登場する宇宙人の基礎となった、2つの映画を紹介します。
最初に紹介したいのが、1956年に大映(現:KADOKAWA)が製作・公開した日本初のカラーSF映画『宇宙人東京に現わる』です。
この映画に登場した宇宙人が“パイラ人”です。彼らの目的は地球侵略ではなく、原水爆実験を繰り返す人類に核兵器廃絶を訴えるというもの。本作は第1作目の『ゴジラ』(1954)と同じメッセージを持った作品なのです。パイラ人の姿はヒトデに似た体に大きな目玉が1つあるというもので、『ゴジラ』などの怪獣と同様に、人が中に入って演じる「ぬいぐるみ」によって表現されました。
このパイラ人のデザイン(「色彩指導」とクレジット)を担当したのが芸術家の岡本太郎氏です。パイラ人の両手を広げた立ち姿はどこか「太陽の塔」に似ていなくもありません。また彼らのトレードマークの大きな目ですが、岡本太郎氏は「目玉」をモチーフにした作品を数多く残しています。シンプルで特異なデザインのパイラ人ですが、やはり岡本太郎氏の芸術作品と共通点があるように思えます。
パイラ人はその姿を地球人に怖がられたため、地球人の美女の姿となり人間社会へ潜入していきます。「姿の異なる宇宙人が地球人の姿に化けて人類の中に入り込む」というシチュエーションは、“ウルトラシリーズ”をはじめ本作以後の特撮作品でも描かれることになります。