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『原神』『崩壊』シリーズなぜここまでヒット? miHoYo・HoYoverse急成長の秘密 ゲーマー視点で分析

コアなゲームファンなら2010年代後半頃に、またカジュアルユーザーや業界以外の関係者も2020年以降に、「miHoYo」や「HoYoverse」の名を聞く機会が増えました。同社がどのような活躍を辿(たど)り、いかなる強みで成功をつかみ取ったのか。その実際に迫ります。

miHoYo・HoYoverse成功のカギは「見た目」にあり!

『崩壊3rd』公式PV第1弾(2016年12月公開)より。アニメ調で描かれた3Dキャラの描写が際立っており、完成度が非常に高い
『崩壊3rd』公式PV第1弾(2016年12月公開)より。アニメ調で描かれた3Dキャラの描写が際立っており、完成度が非常に高い

 ここ数年、「miHoYo」や「HoYoverse」といった名前を、ゲームファン以外が耳にする機会が急増しています。ご存じの方には説明するまでもありませんが、「miHoYo」は多くのゲーム作品を生み出してきたメーカーです。そして、同社のコンテンツを扱う新ブランドとして、2022年に「HoYoverse」が立ち上がりました。

 その名が一躍広まったのは、とあるゲームの大ヒットがきっかけです。その規模は世界的と称してもよいほどで、以前から関心を寄せていたゲームファンのみならず、ゲーム企業以外からの視線も集め、エンターテイメント業界全体から注視されるほどの躍進を見せています。

 miHoYoとHoYoverseがどのような活躍を遂げ、その名を知らしめたのか。その動きに触れてきた一ゲームファンの視点から、当時の印象などを含めて振り返ります。

●2011年に立ち上がった「miHoYo」

 miHoYoは中国にあるゲームメーカーで、設立は2011年(日本法人は2015年設立)。歴史という意味では、まだ10年ちょっとの比較的若いメーカーです。また、初期の作品『崩壊学園』は中国内向けの展開だったため、当時のmiHoYoを意識していた日本のゲームファンはほんのわずかで、大半はその名前すら知りませんでした。

 2015年にようやく、続編の『崩壊学園2』が日本向けにも配信され、このタイミングでmiHoYoを知った人もいました。ですが、日本国内での活躍はまだ先駆けといったところで、その名が大々的に広まるのはまだ少し先の話です。ちなみに『崩壊学園2』の日本向けタイトルは、『崩壊学園』。国内では初上陸のタイトルだったため、シリーズ2作目ながら「2」が外されています。

『崩壊学園』公式PV「崩壊決別」より。全世界ダウンロード数が3000万を超えており、今もなお愛されている
『崩壊学園』公式PV「崩壊決別」より。全世界ダウンロード数が3000万を超えており、今もなお愛されている

●日本に上陸し、『崩壊3rd』で足がかりを作る

 この日本版『崩壊学園』のリリースを足掛かりに、2015年に日本法人を立ち上げ、miHoYoの日本国内に向けた展開が本格化します。そして2017年に配信された『崩壊3rd』をきっかけに、より多くの国内ゲームファンに知られるようになりました。

『崩壊3rd』は、前作の設定などを受け継ぎながら、新たな作品としてブラッシュアップされたゲームです。特に大きな違いは、2Dから3Dへの移行でしょう。前作のバトルは、デフォルメキャラを動かす2Dの横スクロールアクションでしたが、『崩壊3rd』は7~8頭身のキャラクターを操作する3Dアクションに変化しました。

 昨今ではごく普通に見られるようになりましたが、「アニメ調で描かれた美しい3Dモデル」を「滑らかに動かすアクションゲーム」は、決して楽なハードルではありません。しかも、家庭用ゲーム機やPC向けならともかく、2017年時点のスマートフォンの性能で動く、さらに基本プレイ無料のゲームとなれば、当時の水準から見て稀有な存在と言っても差し支えないほどです。

 デフォルメキャラの3Dゲームや、頭身の高いキャラのRPGなどはありましたが、前述した全ての条件をクリアしているという点で、『崩壊3rd』は抜きん出ていました。また、キャラデザインそのものも秀逸で、質が高いのはもちろんのこと、日本人好みのビジュアルでゲームファンを虜(とりこ)とします。

 ちなみに、『崩壊3rd』と同じ年にサービスを開始した作品は、『ファイアーエムブレム ヒーローズ』『アナザーエデン 時空を超える猫』『アズールレーン』などがありました。いずれの作品も頭身の高いキャライラストを用意していますが、バトルの最中はデフォルメされたキャラが戦うスタイルです。

 当時の作品を並べると、頭身の高いキャラで3Dアクションを実現させた『崩壊3rd』が目を引いたのも、頷ける話でしょう。

●「見た目」に秀でていた『崩壊3rd』

『崩壊3rd』「月下の誓い・真紅の愛」宣伝PVより。デザイン性だけでなく、演出も磨きがかかっている
『崩壊3rd』「月下の誓い・真紅の愛」宣伝PVより。デザイン性だけでなく、演出も磨きがかかっている

 誤解を恐れずに言えば、そのビジュアル──素晴らしい「見た目」が、『崩壊3rd』の知名度をあげ、成功に導く力強い理由となりました。

 このように表現すると、「見た目がいいだけなの?」と思われるかもしれませんが、ユーザーにダウンロードさせるほどの動機になる「見た目」は、強みとして十分すぎるほど。そして『崩壊3rd』が提示した見た目は、人を動かすほどの魅力をたしかに放っていました。

 もちろん、ゲーム性自体も良くまとまっており、タイミングを合わせた回避による敵のスローモーション化、心地よい連続攻撃、爽快感のある演出も伴うスキルなど、アクションゲームに欲しい要素は十分以上に揃っています。

 ですが、どれだけ優れたゲームであっても、触ってもらえなければその魅力は伝わりません。特に、スマホ向けの基本プレイ無料ゲームはライバルが多く、いかにダウンロードしてもらうかが重要です。

 この大事な第一歩を、『崩壊3rd』は「見た目」の強みで押し切りました。その狙いが正しかったのは、サービスが7年目に突入し、メインストーリー第2部の実施が予告されている現状からも明らかでしょう。

 作品単体で見ても成功と言える『崩壊3rd』ですが、「miHoYo」の名を業界すら超えて轟かせた作品へと繋ぐ、重要な役割も果たしました。なお、この時点ではまだ「HoYoverse」は設立されていません。

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