【無知は罪】将軍家お家断絶の危機! おしろいと小児死亡の悪夢【薬屋のひとりごと】
アニメ『薬屋のひとりごと』第1話を見て「おしろいは毒って本当?」とSNSで話題になりました。実は、「おしろいの鉛が毒」だと分かっていても使い続けられた歴史がありました。
猫猫「やはり、これは呪いでもなんでもない」
2023年秋アニメ、ヒット中の『薬屋のひとりごと』(原作:日向夏)、物語は中世の中華帝国を舞台に、主人公の猫猫(マオマオ)が持ち前の薬学知識を活かして後宮で起こるさまざまなミステリーを解き明かす、というものです。時代背景や登場人物はすべて架空とされています。
アニメスタートから、ネット上では作品のクオリティに高評価の声が飛び交いますが、そのなかにはこんな疑問もみられました。それは、「白粉(おしろい)に毒があるって本当?」ということです。
アニメ第1話のエピソードは、「帝の御子(みこ)たちが呪いによって次々に命を落とす」というウワサに、猫猫が「原因はお妃たちが使用している、白粉に含まれる鉛。白粉は毒である」と指摘して解決に導く……というものでした。つまり視聴者から、「白粉の毒はフィクションかノンフィクションか!?」と疑問が湧いたわけですね。
そこで調べてみました。白粉に「鉛」が含まれるのは、事実です!……といっても、それはかなり昔の話で、現代に流通している白粉は問題ありません。
「鉛」を原料とする顔料は紀元前ローマ時代から記録があります。また、原料の鉛が人体に有害ということも古くから言われていました。日本に入ってきたのは7世紀頃、中国からで、水銀を含んだ「はらや」と、鉛を含んだ「はふに」(どちらも焼いて白い粉状にしたもの)という白粉で、平安時代から貴族の間で使用されます。
アニメ第1話のエピソードに似た出来事は、江戸時代の将軍家の習慣が例に挙げられます。この時代に入ると、安価で使用感も良い、鉛の「はふに」が大衆化します。高貴な家の母親や乳母は、顔から首筋、胸や背中に、贅沢に厚くたっぷりと白粉を塗っていました。抱かれた乳幼児は乳房を介して白粉を舐めることになります。また、乳児の顔などにも白粉をべったり塗ることもあり、鉛は乳児の体内に徐々に吸収されて中毒症状が起こるようになりました。