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意外なキャスティングで成功? マンガ原作映画の傑作『シティーハンター』ほか5選

実写ならではの官能&格闘シーン

映画『空気人形』 (C)業田良家 / 小学館 / 『空気人形』製作委員会
映画『空気人形』 (C)業田良家 / 小学館 / 『空気人形』製作委員会

 韓国の人気女優ペ・ドゥナが主演したのは、業田良家原作コミックの実写映画化『空気人形』(2009年)です。『万引き家族』(2018年)などの社会派映画で知られる是枝裕和監督が、日本語のたどたどしいペ・ドゥナ主演作として考えた企画で、ラブドール役のペ・ドゥナは官能シーンも瑞々しく演じており、実写映画ならではの魅力を堪能させてくれます。

 ラブドールの「のぞみ」はある日意思を持つようになり、アルバイト先のレンタルビデオ店の店員・純一(井浦新)らと出逢うことで、生きることの喜びと儚さを知ることになります。中身が空っぽの「のぞみ」の肌が破けて体が萎んでいく様子を、ペ・ドゥナは巧みに演じてみせています。原作コミックの知名度に頼った安易な実写化企画はファンから批判の対象となりがちですが、『空気人形』の場合は原作コミックとキャストとの幸福なマリアージュだったといえそうです。

 欧米でも人気の高い三池崇史監督は、これまでもマンガ原作の実写化を手掛けてきましたが、いちばんの成功例は、バイオレンス描写満載の山本英夫原作のコミックを浅野忠信主演で実写化した『殺し屋1』(2001年)でしょう。浅野忠信演じる、死への憧れを抱く金髪ヤクザの垣原と、歪んだ性癖の持ち主である殺し屋1(大森南朋)が激突するクライマックスは、ぞくぞくさせるものがあります。

時代の変化を描いた珠玉の音楽映画

『アイデン&ティティ』
『アイデン&ティティ』

 原作ファンからも愛されている実写化映画の1本として、峯田和伸と麻生久美子が主演した映画『アイデン&ティティ』(2003年)も挙げられます。みうらじゅんの半自伝的コミックを、みうらじゅんと親交の深い個性派俳優の田口トモロヲが初監督したもので、ミニシアター系で公開され、ロングランヒットを記録しました。

 最近ではNHK朝ドラ『ひよっこ』や大河ドラマ『いだてん』などでクセのあるキャラを演じている峯田にとって、『アイデン&ティティ』は俳優デビュー作となった記念すべき作品です。峯田は本職がロックミュージシャンで、彼が演じる主人公・中島がステージで劇中曲「大人の悩みに子供の涙」や「アイデン&ティティ」を熱唱するシーンには、圧倒されるものがあります。

 悩み多き中島の彼女を演じるのは麻生久美子です。みうらじゅんが実在の女性たちから投げ掛けられた言葉が麻生久美子の口を通して語られることで、とてもリアルなものとして観る者の心に突き刺さります。アナログからデジタルの時代へと社会構造が大きく変わっていった1990年代の空気感が生々しく感じられる、忘れがたい作品となっています。

異次元の壁との向き合い方

 近年の人気コミックの実写化映画は、原作の世界観を壊さないように脚本が慎重に練られるようになり、またキャスティングされた俳優たちが原作のキャラクターのイメージと合っているかどうかが話題になることが多いようです。ですが、今回取り上げた実写化作品は、原作の持つメッセージ性こそ尊重していますが、実写映画としての個性がより強く打ち出されているように感じられます。

 例えば、『空気人形』ならラブドールの「のぞみ」にペ・ドゥナが身体性を持たせることで、『アイデン&ティティ』なら峯田和伸にオリジナル曲を熱唱させることで、コミック(二次元)と実写映画(三次元)との間にある壁を乗り越えることに成功したのではないでしょうか。

 時代によって、また監督によって、原作へのアプローチ方法はずいぶんと異なるようです。味わい深い実写化作品はまだまだあるので、また改めてご紹介したいと思います。

(長野辰次)

●映画『シティーハンター THE MOVIE 史上最香のミッション』
2019年11月29日(金)より全国ロードショー。
・原作/北条司 監督・脚本/フィリップ・ラショー
・出演/フィリップ・ラショー、エロディ・フォンタン
・吹替版/山寺宏一、沢城みゆき、玄田哲章、田中秀幸、一龍斎春水、浪川大輔、多田野曜平、土師孝也、恒松あゆみ、三上哲、伊倉一恵、神谷明
・配給/アルバトロス・フィルム
(C) AXEL FILMS PRODUCTION – BAF PROD – M6 FILMS

【画像】まだまだある! キャスティングが光る、マンガ原作の実写映画作品(10枚)

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