オバQから悪の女王へ ヒーローより人気を博した特撮界のレジェンド 曽我町子の足跡
特撮界で長らく悪役を務め、ともすればヒーローたちよりも人気を博した曽我町子さんは、実はアニメ『オバQ』の、初代「Q太郎」の声優でもありました。超人気役を得たはずの女優はいかにして「特撮の女王」への道を歩んだのでしょうか。
「オバQ」大ブレイクの呪縛を乗り越えて魔女開眼!
女優、声優、歌手として1950年代から長く活動した曽我町子さんは、なにより特撮界隈で広くその名を知られています。それというのも、『レインボーマン』『デンジマン』をはじめとする数々の特撮番組で30年以上にわたり、いわゆる「悪の女王」役として出演し続けてきたからです。さらには『ジュウレンジャー』の「魔女バンドーラ」役は海外でも大きな人気を博しました。
そのように、今でこそ「特撮の女王」として知られる曽我町子さんですが、特撮番組に出演する以前は「オバQの」と名前の前に付けられるほど、1965年放送開始のTVアニメ『オバケのQ太郎』(原作:藤子不二雄)第1作目で演じた「Q太郎」役の「声の人」という印象が強かったといいます。同アニメは原作人気も相まって高視聴率を獲得したといい、一方で曽我さんはその「オバQ」のイメージからなかなか抜け出すことができなかったそうです。
転機になったのは、1972年にTV放送が開始された、いわゆる特撮ヒーローものである『愛の戦士 レインボーマン』の「ゴッドイグアナ」役でした。塩沢ときさん演じる敵キャラの、アマゾンの魔女「イグアナ」が大好評で、一度レインボーマンに倒され退場したものの、サイボーグになって復活する予定だったところ、塩沢さん側の都合でそのプランは頓挫してしまい、そこで急遽、イグアナの母親としてゴッドイグアナが誕生します。
なお、曽我さんの実年齢は塩沢さんよりひと回りほど若く、とても母親には見えないわけですが、「実際は老女だけど人の生き血を吸うことで若さを保っている」という設定のキャラクターでした。
曽我さんは舞台役者の出身だったため、それまでTVドラマの仕事などでは演技がオーバー気味になってしまっていたそうです。そうしたなかで受けたゴッドイグアナ役について曽我さんは、「好きなようにやれるなって。リアルにしたらちっとも面白くないからね、自分の芝居をやりやすいのは子ども番組だったんです。これが私の生きる道だって感じましたね」とのことで、そこから「悪の世界」にすっかりはまり込んだ、と、かつてインタビューに答えて語っています(安藤幹夫「東映スーパー戦隊大全 バトルフィーバーJ・デンジマン・サンバルカンの世界」双葉社、2003年)。
曽我さんがゴッドイグアナの次に演じた役は、1976年に放送された『5年3組魔法組』の「魔女ベルバラ」です。仲良し5人組に7つの魔法道具を授けてくれる人のいい魔女で、ときどき子どもたちにいたずらをして困らせる、という役どころでした。そのようなベルバラのイメージを戦隊シリーズに移植したのが、『電子戦隊デンジマン』(1980年)の「へドリアン女王」です。