「ガンダムビルドシリーズ」誕生から10周年 「ガンダム」本編ではできなかった「最大の功績」とは?
ガンプラの物語である「ガンダムビルドシリーズ」が誕生して今年で10年。本家「ガンダム」ではできなかった数々の要素が、新たなファン層の開拓を成し遂げました。その魅力について紐解いていきましょう。
リアルにこだわらないドラマ作りが可能に
「ガンダムシリーズ」から派生した「ガンダムビルドシリーズ」が、今年2023年で誕生10周年を迎えます。「ガンダム」というコンテンツに、新しい可能性を見出した「ガンダムビルドシリーズ」を振り返ってみましょう。
作品観として大きく違う点は、作品のメインとなるロボットです。「ガンダム」のMS(モビルスーツ)が兵器であることに対して、ビルドシリーズはそのプラモデル「ガンプラ」と呼ばれる商品ということです。ここが、戦争で人の生死を描くガンダムとは、一線を画すところでしょう。
それゆえにロボット同士が戦うバトルものであっても、凄惨な戦いのイメージは薄く、戦いが終わった後に互いの健闘を称えあうスポーツものに近い感覚がありました。もっとも、この部分は個人の好みが出るところで、ガンダムらしくないと敬遠する人も少なくありません。
しかし数字的なことを言えば、現在でもガンプラ市場で一定の顧客を生んでいるのは確かな事実です。長い歴史を持つガンダムというコンテンツでは、どの作品も少なからず不支持層は存在するものです。そのプラスマイナスのせめぎあいのなかで一定の利益を確保することが重要というものです。
現在のガンプラ全体を見た時、「ビルドシリーズ」のラインナップ数の割合を見れば、どれだけコンテンツを支えているかわかるというものでしょう。そして、人気だけでなくビルドシリーズがガンプラに与えた影響は大きいものでした。
たとえば、これまで正規のシリーズでは設定の都合上あり得なかったバリエーションを可能にしたことが一番に挙げられます。本来ならば試作機やエース機といったワンオフの機体のバリエーションを、無理なく「ガンプラである」という理由で実現していきました。
商品的な面で言えば、ガンプラのMSとして発売、その金型を流用して本来のMSとしても販売するという方法も確立します。「HGBFビルドストライクガンダム」の金型を流用した「HGCE エールストライクガンダム」や、「HGBF クロスボーンガンダム魔王」を流用した「HGUC クロスボーン・ガンダムX1」などがありました。
この他にも、本来のリアルな世界観ではありえないファンシーな機体「ベアッガイIII」というヒット商品の存在が挙げられます。この路線をさらに推し進めた「すーぱーふみな」に至っては、ほぼ美少女フィギュアというデザインで賛否両論を生みました。
しかし、こういった「ガンプラは自由だ」という方角が新時代を生んだのも事実でしょう。この「ビルドシリーズ」の誕生が、閉塞気味だったガンプラ市場の活性化の呼び水となったことは間違いないと思います。