宇宙人の定番「タコ型」「リトルグレイ」 日本の特撮では独創的なデザインのワケ
「宇宙人」と聞いてイメージする姿はかつてはタコ型、現在は小柄で頭と目の大きいリトルグレイだと思います。日本の特撮作品で、このような姿の「宇宙人」が登場するかどうかを見ていくと、日本の特撮ならではの独創的な「宇宙人」イメージを感じ取ることができます。
かつては「宇宙人」と言えばタコ型だった

私たちが“宇宙人”と聞いて想像する姿はどのようなものでしょうか。かつてはタコに似た姿のものを挙げる人が多かったと思われます。おそらく現在は“リトルグレイ”と呼ばれる、小柄で頭と目の大きい全身灰色の宇宙人をイメージする方が多いのではないでしょうか。
今回はタコ型宇宙人やリトルグレイなど世間一般のイメージする宇宙人が、日本の特撮作品にどのように登場するのかを見ていきます。
タコ型宇宙人の初出はH・G・ウェルズの小説『宇宙戦争』(1897年)に登場した“火星人”です。火星の環境下で進化を遂げた軟体生物で、その姿は重力が低いため足が細く、知能が高いため脳が大きいというものでした。この“火星人”の登場以降、宇宙人と言えばタコに似た姿をしているというイメージが確立されていきました。

“ウルトラシリーズ”の第3作目で宇宙からの侵略者との戦いを描いた『ウルトラセブン』(1967年~1968年)には、バラエティ豊かな宇宙人が数多く登場します。まず『ウルトラセブン』にタコ型宇宙人が登場するのかを見てみましょう。
第9話「アンドロイド0指令」に登場したチブル星人は、頭が大きくて足が細いという姿でタコ型宇宙人に似た体の特徴を持っています。しかしデザインを担当した成田亨さんは、タコではなく貝殻から着想を得てチブル星人をデザインしたと言います。
続いて第22話「人間牧場」に登場したブラコ星人は、顔が人間でいう腰のあたりにあるためタコと同じ頭足類を思わせる姿をしています。しかしブラコ星人には肝心の触手がなく、人間と同じ二足歩行のためタコ型宇宙人とは断定できません。
『ウルトラセブン』以外のウルトラシリーズでもタコの怪獣が登場することはあるようですが、どうやらタコ型の宇宙人は登場していないようです。
また東映の“スーパー戦隊シリーズ”でも、宇宙からの侵略者が敵の作品がいくつかあります。その中でタコ型宇宙人と言える敵は、『特捜戦隊デカレンジャー』のクォータ星人ダゴネールや、『宇宙戦隊キュウレンジャー』(2017年~2018年)に登場した刺客マーダッコなどでしょうか。しかしいずれも従来のタコ型宇宙人の姿とは違い、二足歩行のいわゆる“ヒューマノイド型”。タコを人型のシルエットに再構成した姿をしています。