【漫画】手でうまくハートが作れない娘 後日、作れるようになった方法に「発想が新しい」「素敵」
生まれつき指が欠損しているため、ハートの形を手で表現できない娘。しかし後日、娘のあるアイデアでハートの形を表現できるように……。Instagramで公開されたマンガが、「素敵です!」と話題になっています。作者のはんどあんどふっとさんにお話を聞きました。
素敵な発想に「その手があったか!」
娘のアイデアがに驚かされた出来事について描いたマンガ「ハート」が、Instagramで300以上のいいねを集めて話題となっています。
TikTokの動画を見てダンスを踊ることが好きな、娘のりっちゃん。しかし、りっちゃんは生まれつき右手の指が3本のため、ダンスの振りにあるハートの形を手で表現できずにいました。少し落ち込むりっちゃんでしたが、あるアイデアでハートの形を表現できるように……。読者からは、「素敵です!」「子供の発想には驚かされますね」「できるように考える前向きなりっちゃんがとても愛おしい」などの声があがっています。
このマンガを投稿したのは、NPO法人Hand&Footの代表理事を務める、はんどあんどふっとさんです。春日たろうさんの作画で、娘(りっちゃん)についてのマンガをInstagramで発表しています。はんどあんどふっとさんに、作品についてのお話を聞きました。
ーーりっちゃんは、家でよくダンスの練習をしているのですか?
りっちゃんは、TikTokダンスが好きで、練習しては「ママ、見て見て!」と、よく見せてくれます。最新の曲はもちろんですが、どうやら私が若い頃に流行った曲のダンスもあるようで、「なんでそんなに昔の曲を知っているの~?」といつも驚かされます。小学5年生になったとき、友達を集めてダンス部を新設したようで、今度全校集会で、みんなの前で披露するんだとか。センター争いでけんかになることもあるようですが、とても楽しそうです。
ーーりっちゃんが自分で解決策を見つけたとき、どのような気持ちになりましたか?
「天才か!」「その手があったか」となりました。現在小学校5年生の娘(りっちゃん)は、「裂手(れっしゅ)症」と呼ばれる手の形で生まれてきました。りっちゃんの右手の指は2本欠損していて、関節もひとつありません。この手の形は、約2万人にひとりの割合で生まれるといわれています。
これまでも、右手の指が欠損していることでさまざまな困難にぶつかることがありましたが、その都度、りっちゃんは自分なりの工夫でカバーしてきました。小学校低学年までは一緒にやり方を考える場面もありましたが、高学年になってからは自分で解決することが増えました。「成長したな」とうれしくなりますし、「ほ~、そうやってやるんだ!」と驚かされます。なによりすぐに諦めるのではなく、できる方法を自分で模索する娘をとても尊敬しています。
もちろん「雲梯(うんてい)」など、難易度が高く、そこまでやる気にならないものに関しては、前向きに諦めているようですが(笑)。
ーーハート以外にも、りっちゃんがよくやっている振り付けや手の形はありますか?
手を指さしの形にしたり、ほっぺに両手の人さし指を付けたり、手をグーやピースの形にしたりと、TikTokダンスは手を使って表現するものが多いので、りっちゃんはどうしても同じように表現できません。しかし、3本の指で少しでも近い形になるようにいつも工夫して踊っています。「見て見てー」と私に見せてくれるダンスはまったく違和感がないので、「すごいな」といつも感心させられています。
ーーInstagramのコメント欄では、娘さんのアイデアをほめるコメントが寄せられていましたが、今回のエピソード以外にも、娘さんが「知恵を働かせたな」と感じたエピソードはありますか?
鉄棒は難しいかなと思っていたのですが、棒をつかめない右手側は腕を引っ掛けて前回りをしていました。
また、小学3年生の頃に始まったリコーダーの授業では、指欠損用のリコーダーを買って準備していたのですが、ある日「あのさ、なんか左手しか使わないから普通のでいいや」といって、突然通常のリコーダーを使うようになりました。最初の1年間は「ド・シ・ラ・ソ」の音しか使わず、左手のみで演奏できてしまうそうなんです。親としては、「せっかく指欠損用のリコーダーを買ったのにー!」と思う気持ちもありましたが、少しでも楽に、みんなと同じように演奏したいと思った上での結論だったと思うので、そんな娘がほほ笑ましかったです。
ーー作品について、どのような意見が寄せられていますか?
「素敵です!」「子供の発想には驚かされますね」「できるように考える前向きなりっちゃんがとても愛おしい」など、娘の行動に対する感激のコメントをたくさんいただきました。
ーー今回のマンガを描いたきっかけを教えて下さい。
手に違いを持って生まれてきたりっちゃんにとって、手を使った表現はずっと困難のひとつでした。0歳から通っていた保育園で、「グーチョキパーでなにつくろう」や「おべんとうばこのうた」など、同じクラスの友達が当たり前にできる手遊びを、周りをキョロキョロと見ながら一生懸命まねをしようとするりっちゃんの姿をいまでも覚えています。そんなりっちゃんを見て、母としては胸がキュッと締め付けられるような思いでした。
小学校に入ってからは、「指を使う対決ゲーム」で周囲の子から「りっちゃんはできないよね」と決めつけられてしまい、ゲームに参加できないことで悩んでいた日もありました。そんななか、TikTokダンスが好きになり、「どうしてもやりたい!」といっていたハートの振り付けを、自分のアイデアで表現した姿を見て「大きくなったな」と成長を感じました。
りっちゃんと過ごしていると、10年前、りっちゃんが周囲の子と違う手の形で生まれてきたことに、うじうじと悩んでいた自分が恥ずかしくなります。目標を目指す途中でやりにくさや困難にぶつかったとき、すぐに諦めるのではなく、自分なりのやり方を模索して実現させる姿は、きっとほかの誰かにとっても勇気になるのではと思い、マンガにしました。
ーー創作活動で今後、取り組んでいきたいことを教えて下さい。
りっちゃんの日常生活を見ていただくことで、手足の違いはもちろんですが、「指がないってなんだかかわいそう」「できないことが多そう」「不便そう」などのマイナスイメージを、少しでも変えていければと思っています。
また、りっちゃんの困難は「じろじろと見られるのが嫌だ」というような、主に「見た目」の問題に多いです。マンガを通じて、多くの方に手足の形の多様性を知っていただくことで、いつかどこかで手足の違いを持つ方と出会ったときの「びっくり」を少しでも減らせたらいいなと願いつつ、これからも発信を続けていきたいと思います。
(マグミクス編集部)