「エルフ=長い耳」は日本発祥? ファンタジーファンのすそ野を広げた『葬送のフリーレン』
「剣と魔法の世界」を舞台にした『葬送のフリーレン』。一切の説明がされないまま登場するエルフやドワーフといった異種族や、勇者と魔王の物語は一般常識なのでしょうか。ファンタジーのお約束について、その起源を振り返ります。
1000万部突破の大人気ファンタジー
現在放送中のアニメのなかでも特に高い人気を誇る『葬送のフリーレン』は、ファンタジーの「お約束」を盛り込んだ「剣と魔法の世界」の物語です。金曜ロードショーの初回スペシャル放送がきっかけで視聴をはじめたという人も多いでしょう。
これまでファンタジーに親しんでいなかったファン層にまで「フリーレン」の人気が拡大した結果、なぜエルフは耳が長くて長生きなのか?といった素朴な疑問を持つ声が聞こえてきました。この記事では日本における「ファンタジー系作品」のお約束とその起源について振り返ります。
●日本における「ファンタジー系」作品のお約束とは?
ファンタジーと聞くと皆さんはどのような作品をイメージするでしょうか。多くの人は、選ばれし勇者と世界征服をたくらむ魔王、魔法使いや戦士といった旅の仲間たち、樽(たる)のような体型のドワーフや尖った耳のエルフ、ゴブリンやオーガなどの危険なモンスターを思い浮かべるのではないでしょうか。
これらのイメージは作品を超えてゆるやかに共有されており、ファンタジーという懐の広いジャンルを形成しています。中世から近世にかけてのヨーロッパを「イメージ」した世界に異世界転生して活躍する作品がその代表だと言えるでしょう。
こういった設定の直接的な根源はイギリスの作家J・R・R・トールキンによる『指輪物語』などの古典小説だけではありません。実はその多くがかつて国民的RPGと呼ばれた『ドラゴンクエスト』(以下:「ドラクエ」)にあると言われています。
たとえば『ドラクエ3』では4人組パーティとして勇者、戦士、僧侶、魔法使いというのが定番でした。『葬送のフリーレン』でも勇者ヒンメルと戦士アイゼン、魔法使いのフリーレンと僧侶ハイターの4人でパーティを組んで魔王を討伐しており、これは極めて「ドラクエ」的だと言えます。
もちろんファンタジーというジャンルのイメージソースとなった「ドラクエ」もまた数多くの作品の影響下で生まれました。『指輪物語』や『ダンジョンズ&ドラゴンズ』『ウルティマ』『ウィザードリィ』などがその代表です。