「エルフ=長い耳」は日本発祥? ファンタジーファンのすそ野を広げた『葬送のフリーレン』
「ドラクエ」で遊んだことのない世代の登場

『ファイナルファンタジー』と並んで、誰もが一度は遊んだことのあるとされている「ドラクエ」ですが、実は令和の時代においては状況が異なります。一度も「ドラクエ」をプレイしたことがない、それどころかRPGを遊んだことがないという人は珍しくありません。
かつてはファミコンからスーパーファミコン、プレイステーションといった具合にゲームハードを買い替えて遊ぶという文化がありましたが、現在は違います。据え置きのゲーム機どころかTV自体を持たない人や、スマホなどのモバイル端末で手軽にゲームを楽しむ人が多いのです。
このような時代の変化により、誰もが知っているからこそ「お約束」になりえた大前提の知識が共有されない世代が現れました。そういった世代にまで『葬送のフリーレン』がリーチしたからこそ、改めて素朴な疑問が生まれたと言えるでしょう。
●実はエルフの耳は長くなかった!エルフの耳が伸びた理由
ファンタジー作品に登場するエルフといえば、長命で魔法に優れた高貴な種族のイメージが共有されています。その根源の多くは『指輪物語』に由来しているのですが、耳が長くとがったのは『ロードス島戦記』で日本におけるエルフの代表ともいえる「ディードリット」をデザインした出渕裕さんが大きく影響を与えています。
2018年に行われた「『ロードス島戦記』出渕裕×『ペルソナ』副島成記:対談」内で、出渕さんは映画『ダーク・クリスタル』に登場する「ゲルフリン」という種族の少女「キアラ(キーラ)」の耳が長いから、自分のなかにエルフの耳は長いとインプットされていた、と述べています。ゲルフリン(Gelfling)とはエルフ(elf)のスペルにGを付けたオリジナル種族なのです。
つまり、もともとのエルフの耳はディードリットやフリーレンのように長くありませんでした。『指輪物語』の実写映画『ロード・オブ・ザ・リング』に登場するエルフ「ガラドリエル」の耳は尖っていますが、長く伸びてはいません。耳が長いエルフは日本産だと言えるでしょう。
●再びファンタジーの認知を高めた『葬送のフリーレン』
『葬送のフリーレン』の人気の高まりによって、ファンタジーの「お約束」は再び広く認知されるようになりました。このフォーマットを使えば「時代劇」のように、舞台背景を説明する必要がありません。「お約束」の認知力が高いジャンルの寿命は長いです。ファンタジーのブームは一過性に終わらず、今後も続いていくことでしょう。
(レトロ@長谷部 耕平)