ツッコむのは野暮? 奇抜すぎた『スケバン刑事』がもたらした「偉大なる功績」
「鷹ノ羽学園2年B組麻宮サキ。またの名はスケバン刑事」で始まる啖呵が印象的な『スケバン刑事』。現役アイドルがスケバンの刑事を演じるというキワモノ的な内容でしたが人気を獲得し、シリーズ化もされました。
奇抜な設定だったのに大ヒットした「スケバン刑事」シリーズ

1985年、ドラマ『スケバン刑事』はフジテレビ系で夜の7時半から放送されました。当時デビュー曲の『卒業』が大ヒットし、『ザ・ベストテン』などの歌番組にも出演していたアイドルの斉藤由貴さんが、主人公の麻宮サキ役を務めています。
悪党たちと戦う際に「てめえら、許さねえ!」と啖呵(たんか)を切り、ヨーヨーを武器にして戦う様は、歌番組やCMなどの清純な雰囲気と真逆のイメージで戸惑ったファンも多かったことでしょう。
しかし、ドラマは大ヒットし、その後シリーズ化されました。そこで今回は、今では奇抜に感じる「スケバン刑事」シリーズの設定や人気の理由について注目します。
そもそも当時の事情を知らない人は、「夜7時台にスケバンが主人公のドラマを放送して大丈夫?」と思うかもしれません。
1970年代から80年代初頭にかけて、中学や高校での「校内暴力」が社会問題になり、『3年B組金八先生』第2シリーズ(1980年~81年放送)などでも主題に取り上げられた背景があります。しかし、『スケバン刑事』が放送された85年の頃には沈静化し、「不良」の存在は半ばエンタメ化していったのです。
1984年に『不良少女とよばれて』や『スクール・ウォーズ ~泣き虫先生の7年戦争~』が放送、1985年には不良マンガの金字塔である『ビー・バップ・ハイスクール』が映画化されるなど、不良たちが活躍するという物語はお茶の間にも浸透していきます。
また「スケバン刑事」シリーズの特徴といえば、武器として用いた「特製ヨーヨー」です。なじみのない人からすると「ヨーヨーが武器なんてありえない」とツッコミたくなる気持ちもあったはずです。
しかし当時も人気だった、恨みを晴らすために裏の仕事を遂行する「必殺仕事人」シリーズでは、殺し屋が「かんざし」や「三味線の糸」などの独特の得物で華麗に悪人を成敗していました。
また、戦後の日本では何度か空前のヨーヨーブームが巻き起こり、大人まで認知していたという背景もあります。そのため、当時『スケバン刑事』を観た筆者としては「ヨーヨーが武器」という設定は、それほど違和感なく受け入れられました。
それに当時の現役アイドルに、高度な格闘アクションを求めるのは酷な話です。ですがヨーヨーのほうに焦点が当たり、悪人をバタバタ倒すことで、主人公・サキの強さが一層強調される演出的な利点もあったはずです。
ちなみに原作マンガを手がけた和田慎二氏によると、原作ではヨーヨーに仕込まれた「桜の代紋」を見せながら名乗ったのは1回だけで、TVドラマで多用された「見得(みえ)を切る」シーンを描くのは恥ずかしかったそうです。