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怪獣シーンは「過去作の使い回し」? でも子供たちの心を打った『オール怪獣大進撃』

1969年公開の『ゴジラ・ミニラ・ガバラ オール怪獣大進撃』では、なんとゴジラの子供であるミニラがしゃべります。数多くのゴジラ映画で、怪獣が言葉を話すのは本作だけです。特撮の規模が小さく、定番の自衛隊との攻防もありません。それでも当時の子供たちに支持されたのは、少年とミニラが友達になるという本作独自の魅力にありました。

怪獣が登場する場面はほとんどが過去映画のストック

『ゴジラ・ミニラ・ガバラ オール怪獣大進撃』ポスタービジュアル TM & (C)1969 TOHO CO., LTD.
『ゴジラ・ミニラ・ガバラ オール怪獣大進撃』ポスタービジュアル TM & (C)1969 TOHO CO., LTD.

 1969年に公開された『ゴジラ・ミニラ・ガバラ オール怪獣大進撃』は、登場する怪獣こそ多いものの、ほとんどが既存作の映像の流用で、オリジナルの特撮部分は少ない作品でした。怪獣が登場するのは主人公である少年の夢のなかで、そのためにミニラが喋るという離れ業も実現し、さらに子供たちの共感を得たことで本作は独自の魅力を放っています。

 主人公の一郎は引っ込み思案で、ガキ大将「ガバラ」とその取り巻きにいじめられていました。そんなある日、夢のなかで怪獣島に行きミニラと出会います。なぜかミニラは一郎と会話ができて、一郎と一緒の時には背丈も同じくらいです。怪獣のパートは一郎の夢のなかの出来事なので、普通ではありえないリアリティを無視した設定になっています。

 またゴジラ映画定番の町の破壊や、自衛隊の兵器との攻防も一切ありません。地球侵略を狙う宇宙人や悪の組織は出てこない設定なので、「ゴジラ映画のお約束シーン」もありませんでした。

 2016年8月15日に発行された『ゴジラ解体全書』(宝島社)によると、本作は新怪獣ガバラとゴジラ、ミニラの登場シーン以外のほとんどは、『ゴジラ・エビラ・モスラ 南海の大決闘』(1966年)『怪獣島の決戦 ゴジラの息子』(1967年)からの流用映像でまかなわれているとのことです。『オール怪獣大進撃』というタイトルにはなっているものの、どこか物足りない内容と言わざるを得ませんでした。

 やがて一郎は夢のなかで自由に怪獣島に行き来できるようになり、そこでミニラもまた同じガバラという名の怪獣にいじめられていると知ります。その後、ミニラは父ゴジラの立会いのもと、ガバラと1対1で対決することになって、何度倒されても立ち向かい、一郎の知恵を借りてついにガバラを倒しました。

 そしてミニラから勇気をもらった一郎は現実に戻って、いじめを克服するのです。1998年7月発行の『ゴジラ来襲!! 東宝怪獣・SF特撮映画再入門』(ロングセラーズ )で「佳作」と評されているように、上映時間わずか70分のスケールながら、子供たちに親近感のあるミニラの活躍と気弱な少年の成長が記憶に残る作品でした。

 これ以降の『ゴジラ対ヘドラ』(1971年)『地球攻撃命令 ゴジラ対ガイガン』(1972年)などでは、以前と同じように大人が主人公となり、ゴジラと共闘して敵怪獣と立ち向かう既定路線に戻ります。『ゴジラ・ミニラ・ガバラ オール怪獣大進撃』は子供が主人公で、なおかつ怪獣が喋るという唯一無二のゴジラ映画だったのです。

参考文献:

『ゴジラ解体全書』(宝島社)
『ゴジラ来襲!! 東宝怪獣・SF特撮映画再入門』(ロングセラーズ )
『昭和40年男 2023年12月号』(ヘリテージ)

(LUIS FIELD)

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