「ちゃんと終わってほしい」「いつ再開？」　休載が長い名作マンガたち

また読める日は近い？

　一般的に「休載が多い」マンガといえば、すぐに思い浮かぶのが冨樫義博先生の『HUNTER×HUNTER』ではないでしょうか。2022年におよそ4年ぶりに連載を再開した際には、その休載期間の長さも話題になりました。

　冨樫先生は日常生活にも支障が出るような腰痛を患っていることを発表していますが、ほかにもいろんな理由で長く休載しているマンガは多々あります。

●『バガボンド』

『バガボンド』は、大ヒットマンガ『SLAM DUNK』で知られる井上雄彦先生が、1998年から「モーニング」で連載を開始したマンガです。同作は吉川英治氏の小説をもとに、剣豪・宮本武蔵の生涯が描かれています。殺し合いの螺旋の中へと身を投じていきながらも剣の道を究めようとする者たちが放浪の人（バガボンド）となり、その運命に翻弄されていく物語です。

　同作で描かれる大胆かつ斬新な宮本武蔵像は読者を魅了し、「講談社漫画賞」、「文化庁メディア芸術祭大賞」、「手塚治虫文化賞マンガ大賞」など数多くの賞を受賞し、人気も評価も絶好調でした。しかし、同作は2015年2月を最後に休載が続いています。

　井上先生は過去にも体調不良を理由に休載していた期間があり、読者の中には「体調を直すのを優先してほしい」「未完のまま終了になるかもしれない」と心配する人もいました。これに対して井上先生は休載時「やっぱり放り投げたって思われたくない」とコメントしており、2022年に自身で監督した映画『THE FIRST SLAM DUNK』が公開された際のインタビュー（映画の公式サイトに掲載）では、『バガボンド』について「自分の幅を広げてくれた作品」「早く描きたい」とも語っています。

　井上先生の体調が一番なのは当然として、ここまでの情熱を持っている作品なので、時間がかかっても完結させてくれるのではないでしょうか。

●『ヒストリエ』

『ヒストリエ』は、『寄生獣』で知られる岩明均先生が漫画家としてデビュー前から温めていた作品で、2003年に「月刊アフタヌーン」で連載開始されました。舞台は紀元前で、アレキサンダー大王の書記官となるエウメネスの波乱に満ちた生涯を描いた歴史大作です。

　エウメネスは幼い頃から読書好きで聡明な子として育ちますが、義父の暗殺によって蛮族・スキタイであったことを明らかにされ、奴隷の身分に落とされてしまいました。奴隷として売られたエウメネスは、流れ着いた村で侵略者たちを罠にはめて返り討ちにします。エウメネスはその後も知略の才能を次々に発揮し、徐々に成り上がっていきました。

　抜群の伏線や巧みな戦術が描かれた同作は、世界史に詳しくない人でもハマってしまう魅力があります。評価も高く、「文化庁メディア芸術祭マンガ部門大賞」や「手塚治虫文化賞マンガ大賞」などを受賞してきました。しかし、2022年8月に「発売時期未定の12巻の作業をするため」という理由で、現在まで休載に入っています。

　ネット上では、「休載するけど岩明先生はやっぱり天才」「ライフワークとしてのんびり続けてほしい」などの声が多いです。岩明先生は、休載が発表された「アフタヌーン」の2022年10月号にて、「物語全体を確実に『完結』に辿り着けさせるための思案をめぐらしてゆかねば」とも語っています。歴史マンガは壮大で面白い一方、作者の負担もかなり大きいのかもしれません。

●『NANA』

　矢沢あい先生の人気マンガ『NANA』は、2000年に「Cookie」にて連載が開始されました。同作は、プロシンガーを目指して上京してきた大崎ナナと、彼氏を追って追って上京してきた小松奈々が主人公です。

　同じ年齢で、同じ名前を持つふたりの「NANA」の友情や恋、挫折や成長を描く同作は、アニメ化やゲーム化、実写映画化もおこなわれるほどの大人気作品になりました。海外にも多くのファンがいることで知られています。しかし、同作は作者の療養のため2009年より休載しています。

　2022年に初の展覧会「ALL TIME BEST 矢沢あい展」が開催された際は、矢沢先生がファンへメッセージを残しました。そのなかには「『NANA』の休載から長い年月が経ち、心配をかけたままで本当にごめんなさい。今後は体調管理しつつまた作品を描いていけたら」という言葉もあったのです。ファンからも、「無理せずにぜひ続けてほしい！」「続きが読める可能性が残っていて嬉しい」といった声があがっていました。