「ファミコン40周年」としての2023年を振り返る 「お祝い」の一方、「カセット高騰」など新たな問題も
ファミコンにまつわる新たな「問題」も

一方、2023年にはファミコンにまつわるいくつかの問題も噴出しています。ファミコンソフトを始めとするレトロゲームが海外で人気となり、価格が著しく高騰しています。特に新型コロナウイルスによる渡航制限が解除された後は、観光客の土産物として購入され、大量に海外へと流出し続けている状況です。
もともと、流通したゲームカセットの量が膨大にあるとはいえ、ゲーム資産を文化として考えた場合、散逸は研究の大きな障害となります。レトロゲームをリモートでプレイできるような環境および法律の整備が進行中ではありますが、手遅れになる前にデータだけでも保全しなければいけない状況と言えるでしょう。
カセットが高騰すれば、当然発生するのが「偽物」問題です。すでにレアなカセットでは精巧な偽物が出回っていますが、対策は経験豊かなショップ店員の眼力と経験に頼る状態です。おそらく、専門店を経由しないネット売買では、相当な数の偽物が出回っていると思われます。
また、「40周年」に先立って2022年11月に発売された書籍「ゲームの歴史」も、物議を醸しました。ファミコンのカラーリングについて、長年ささやかれてきた「かつて白とエンジ色のプラスチックが安かったから」という噂を取り入れて記述するなど、数多くの誤りや事実誤認が指摘され、最終的には回収の憂き目を見ています。
ゲームの歴史とは、ひとりの人物が語って網羅できるような単純なものではありません。膨大な数の人間がさまざまな分野で心血を注いで練り上げてきたものであり、その歴史をまとめて後世に伝えるためには、ゲームの歴史に関わった当事者たちの証言や資料を集め、学術的に検証していくというプロセスが必要です。
ビデオゲームやファミコンの黎明期に活躍した人たちも高齢化していきます。今こそ、各分野の関係者が力を合わせて取り組まなければならない時期に来ているのかもしれません。
(早川清一朗)