Adoが「顔出し」しないのはなぜか そもそも現代では「メリット」が少ない?
「アニメとの相性が良い」という可能性も

まず考えられるのは、Adoほどの実力を持つボーカリストであれば、顔を出すメリットはそれほどない……という点です。彼女の歌を聞けば、歴史に名を残す歌い手であることは素人にも容易にわかります。むしろ顔出しをせずにミステリアスな雰囲気を保ち続ける戦術を取った方が効果的なのかもしれません。
容姿が良くないからマイナスになるのではないか……という意見もあがっているようです。AKB48などに代表される近年のアイドルであれば、歌と容姿、そしてダンスでアピールすることが多いため顔出しは必須となりますが、Adoの場合はむしろ「歌」に注目を集めるために顔を出さない方が良い……と考えた可能性もあります。
なお、アニメソングの歌手としてデビューし、当初は顔出しをしていなかった前例もあります。2010年にデビューした女性2人組ユニット「ClariS」は、2011年のTVアニメ『魔法少女まどか☆マギカ』のオープニング「コネクト」で一躍ブレイクを果たしました。
しかし当初は現役中学生であるという理由で素顔は公開されず、メンバー交代を経て2017年のライブで素顔の初披露に至っています。もし中学生の時点で素顔が公開されていれば、学生生活が崩壊するようなリスクも考えられます。もしそうなれば後の人生に大きなダメージを与えるでしょう。成人したタイミングでの素顔公開は、むしろ大人が配慮すべきポイントなのかもしれません。Adoは既に成人していますが、素顔を公開すればプライベートを追いかけられることにつながります。そうした煩わしさを避けるためにも、顔を出していないのかもしれません。
また、これはやはり近年活躍が目立つYOASOBIも同様ですが、「あまり顔を出さない方がアニメとの相性がいい」という可能性もあるでしょう。虚構の世界であるアニメを彩る歌声に、生身の人間の顔は不要なのかもしれません。
現代ではTVの歌番組も減少し、かつて歌文化を支えた「キャバレー」などの場所も少なくなっています。若手歌手の活躍の場として使われていたデパートの屋上ステージも、もう見ることはありません。路上ライブを敢行すれば、すぐに警察が飛んでくる世の中です。配信で世界中に歌を届ける時代となった以上、生身の顔の必要性は限りなく薄れていると言うこともできそうです。
(早川清一朗)