【漫画】脳の病気で記憶を失くした父と絶望の23年間 最期を迎え、母の言葉に涙
漫画家・吉田いらこさんの幼少期、脳の手術のために父親が入院することになりました。容体は悪化し、記憶に障害が残ってしまいます。父の変貌ぶりに戸惑いながらも、家族で支え合いながらかけがえのない時間を過ごします。実家を出て吉田さんが30代になった頃、母親から連絡があり……。作者の吉田いらこさんにお話を聞きました。
23年間夫を支えてきた、妻の決断とは

父と母、そして妹とごく普通の暮らしを送っていた吉田いらこさん(@irakoir)。しかし吉田いらこさんが高校1年生を迎えた頃、40歳だった父に脳腫瘍が見つかります。切除手術を行ったものの、記憶力に障害が残り、父は家族の顔すら分からなくなってしまいました。
障害の影響なのか、性格も変わってしまった父に戸惑いながらも、家族で支え合いながらなんとか生活を続けます。その後、吉田いらこさんは就職して家庭を持ち、父と離れて生活することになりました。とある日、介護を続けていた母から父に関する重要な相談を持ち掛けられて……。
吉田いらこさんによるエッセイマンガ『家族を忘れた父との23年間』がX(旧:Twitter)上で公開されました。いいね数は8000を超えており、読者からは「お母様、とんでもなくすごい方です。22年間鬼にならなかった……そんな方、なかなかいません。本当にお疲れ様でした。」「延命治療の決断も真剣に介護に向き合ったからこそ、最善の選択ができた」「どうしようもない現実が人生にはやってきますもんね。それとどう向き合うか、ものすごく考えさせられました」などの声があがっています。
吉田いらこさんは漫画家、イラストレーターとして活動しています。2023年12月4日には、若年性認知症と向き合う家族の3年間を描いた闘病セミフィクション、書籍『夫がわたしを忘れる日まで』(KADOKAWA)が発売されました。
作者の吉田いらこさんにお話を聞きました。
ーー今作『家族を忘れた父との23年間』が生まれたきっかけや、理由を教えて下さい。
父が病気になった当時の私は高校生で、父のことは他人になかなか話せませんでした。でも本当は誰かに聞いてほしいという気持ちが長年ありました。そこで、コミックエッセイという形で気持ちを吐き出すことにしました。
ーー常人では想像もできないほど大変な日々だったと思います。今作を描くうえでこだわったポイントや、お気に入りのシーンなどはありますか?
気に入っているのは、母が父の延命治療について決断するシーンです。父が病気になってから、私たち家族は父のためにとさまざまな努力をしてきました。記憶の刺激になるようにとたくさん外出して思い出を作ったり、思い出の場所や音楽に触れさせてみたり……。でも、何をしても効果はありませんでした。そのような絶望を20年間積み重ねてきたうえで決断した、母の気持ちをしっかり描きたいと思いました。

ーーたくさんのコメントが寄せられています。特に考えさせられた読者の声やうれしかったコメントなどがありましたら教えて下さい。
同じような経験をされていて、共感してくださる方が多かったことにとても驚きました。私が感じたことそのままを描いたので配慮のない内容になっていますし、傷つけてしまう人もいるだろうと思っていたので意外です。特に、周りからの的外れの励ましの言葉に傷ついているというコメントには、涙が出てしまいました。励まそうとしてくれる周囲の人たちの優しさも分かるのですが、介護のつらさは経験した人にしか分からないのかもしれません。
ーー延命治療をしないとズバッと決断したり、「介護で疲れきって鬼になる前で良かった」とつぶやいたり、お母様の強さと愛情の深さが光るエピソードでした。ほかに、お母様の印象的なエピソードがあれば教えて下さい。
よくあることだと思いますが、父が病気になっていろいろと口を出してくる親戚がいました。今すぐ離婚して実家に戻りなさいという人もいれば、今すぐに夫の実家へ身を寄せなさいなど、実際に苦労しない人たちは言いたい放題です。そういう外野の声を母はすべて跳ねのけ、自身が希望する自宅介護という選択をしました。それまで私は母のことをおとなしいタイプだと思っていたのですが、信念がある人だと知りました。
ーー書籍『夫がわたしを忘れる日まで』(KADOKAWA)が2023年12月4日に発売されました。今作がもとになったということで、書籍化された経緯を教えて下さい。
『家族を忘れた父との23年間』の元となったコミックエッセイを2020年にSNSに投稿していました。それを読んでいただいた編集の方から「若年性認知症をテーマにしたセミフィクションを描きませんか?」とお声がけいただき、書籍として発売することになりました。
ーー『夫がわたしを忘れる日まで』のあらすじと見どころを教えて下さい。
結婚するときに、どんな困難も乗り越えてみせると誓った夫婦。その夫を脳の病気が襲います。徐々に記憶をなくしていく夫に対し、妻はどういう選択をするのか……。
この作品は、作者の私自身の経験と後悔がベースになっています。父が病気になったときに何もせず現実から逃げてばかりいた当時の自分に後悔しており、もし次に家族が病気などで介護をするときが来たら今度はきちんと向き合いたいと思って本作を描きました。
ーー2024年はどのような創作活動をする1年にしたいですか?
さまざまな家族を描いていきたいと考えています。一見、幸せそうな家庭でも外からは分からないいろいろなゆがみがあったり、逆に他人から見たら大変な状況でも、当人たちは幸せに感じて暮らしていたりします。幸せの形や価値観は人それぞれで興味があります。そのような話をマンガで表現できたらなと思っています。
(マグミクス編集部)































