1978年放送、富野由悠季監督『無敵鋼人ダイターン3』 本当に子供向けのアニメ?
第1話から濃密な演出に驚かされる

第1話のタイトルは「出ました! 破嵐 万丈」。すでにかなりの万丈推しです。富野監督は後に『ダイターン3』のスピオンオフ作品として万丈を主人公にした小説を全4作執筆しています、かなりのお気に入りキャラクターなのでしょう。
冒頭、いきなり水着姿の金髪美女が走っていきます。この女性こそが万丈のパートナーとなるビューティ・タチバナです。これ、本当に子供向けのアニメなんでしょうかね?
さらに1話を観ていくと、とにかく万丈のキャラクターがド派手に演出されているのが分かります。ステンドグラスをぶち割って登場し、拳銃でメガノイドをばったばったと撃ち倒し、伸びやかなキックで柱の向こうのメガノイドを蹴り倒し、牢屋の鉄格子を素手で捻じ曲げ、走る自動車の上に飛び乗るのです。今改めてじっくりと見直してみると、一瞬たりとも視聴者の目を切らさないような仕掛けが随所に仕込まれているのがよく分かります。往年のスパイアクションの傑作『007』と時代劇の殺陣を融合させ、アニメのアクションとして昇華させていると筆者は感じました。
万丈を支えるキャラクターも粒ぞろい。ビューティ・タチバナはメガノイドを投げ飛ばし、もうひとりの女性パートナー、三条レイカは万丈の愛車、ダイターン3のコクピットであるマッハアタッカーを無断借用して突っ走ります。とにかくダイターン3登場までの演出の密度が濃く、現代のアニメにもまったく引けを取りません。40年以上前にこれほどの作品を作り上げた富野監督恐るべしと言うほかはないでしょう。
ただ、残念ながら、40年前の作品だけあって声優の方々の多くが鬼籍に入られています。万丈役の故・鈴置洋孝さんは2006年に、レイカ役の故・井上瑤さんは2003年に、ギャリソン役の故・北村弘一さんは2007年に、万丈の助手を自称する少年トッポ役の故・白石冬美さんは、2019年に亡くなりました。もし御存命であればBlu-ray BOXの発売と共に、対談で当時のお話が聞けたかもしれません。
40年越しの思い出話ではどんな話が飛び出すのか、それはもう想像の中の世界にしか存在しないものとなってしまったのがただ悲しいです。
(早川清一朗)