初期戦隊の異変 デンジブルーはなぜアンパン好きのコミカルキャラになった?
第1作『ゴレンジャー』から始まり、スーパー戦隊ではキャラクターが色で区分けされていました。しかし、4作目の『デンジマン』では、ブルーがアンパン好きのコミカルキャラになり、早くもキャラ設定が崩壊しています。実は当初は通常通り、イエローがコミカル担当だったらしいのです。現場では何が起きていたのでしょうか。
コミカルに徹しきれなかったイエローからブルーが引き継いだ?
戦隊シリーズでは1975年第1作『秘密戦隊ゴレンジャー』では、戦隊の色によって、キャラクターの設定が明確に色づけされていました。ところが1980年の第4作『電子戦隊デンジマン』で、早くもそのルールに異変が生じます。それまではクールだった青のデンジブルーが、どういうわけか「アンパン好きのコミカルキャラ」に変わったのです。現場では何が起きていたのでしょうか。
スーパー戦隊シリーズでは、昔から赤はリーダー、青はクールキャラ、イエローは食いしん坊で力持ちのコミカルキャラと、設定が固定されていました。実は本作もイエローが「コミカル担当」のはずでしたが、途中で変わってしまいます。
資料集『東映スーパー戦隊大全バトルフィーバーJデンジマン・サンバルカン』(双葉社)によると、デンジイエローこと黄山純を演じた津山栄一さんも、当初は監督から「三枚目っぽい演技で」と指示されており、表情をオーバーにしながら、コミカルキャラを作っていたようです。しかし、台本にはコミカルな描写やセリフがなく、苦戦します。なぜなら黄山は宇宙物理学に精通した科学者という設定なので、なかなか笑いを作れる状況ではなかったのです。
そもそも、黄山の人物設定に無理があったのかもしれません。そのため次第に津山さんは、コミカルな演技をなくして、優しさや頼りなさを強調していくようになったのです。
一方、デンジブルーこと青梅大五郎役の大葉健二さんは、1979年の前作『バトルフィーバーJ』にて、バトルケニアこと曙四郎役ですでにコミカルキャラを担当していました。大葉さんは当初、バトルケニアと差別化するため、怒りっぽいキャラを演じます。
しかし、いつまでもコミカルキャラになりきれない津山さんに詰めよったとき、津山さんから「コミカルよりもシリアス路線の芝居がしたい」と言う話を聞き、大葉さんは喜んでコミカルキャラを引き受けるようになったようです。
大葉さんは前作でもコミカル担当だった上に、デンジブルーの青梅役は元サーカス団で子供たちの人気者という設定なので、コミカルな演技をしやすかったのでしょう。
大葉さんは師匠・千葉真一さんの演技を観察し、「三枚目的な表情、動きがあるからこそ、ビシッと決めたときにカッコよく見えるもの」という分析をして演技にまい進します。そして、自分なりの青梅大五郎を演じきったのです。
さらに大葉さんは監督と相談して、キャラづけのためデンジブルーの青梅を「アンパン好き」という設定に変更しました。番組が始まって、ごく初期にキャラクターのシフトが行われたのか、青梅のアンパン好きという設定は第3話に早くも登場しています。
余談ですが、2作に渡りスーパー戦隊で存在感を示した大葉さんは1982年『宇宙刑事ギャバン』で、ついに主役の座を射止めています。強さとコミカルさを兼ね揃えたギャバンこと一条寺烈は子供たちに熱狂的に支持されて、メタルヒーローシリーズの礎となりました。
一方、スーパー戦隊シリーズは1981年の第5作『太陽戦隊サンバルカン』に出演する黄色のバルパンサーから、再びカレー好きのコミカルキャラに戻ります。さらに、第8作『超電子バイオマン』ではイエローが女性になって、そこから徐々にキャラの色づけが崩れていくことになるのです。第46作『暴太郎戦隊ドンブラザーズ』のキジブラザーは、男性がピンクになり多様性を感じさせます。
今後も時代の変化によって、カラーとキャラ設定がどのように移り変わるのでしょうか。そういった点に着目して、戦隊シリーズをみていくのも面白いかもしれません。
(LUIS FIELD)