任天堂「スイッチ8年目」突入という異変 好調過ぎて「後継機」出しづらい?
『ゼルダの伝説』や『マリオカート』がスイッチでさらに躍進
●人気シリーズは、スイッチ世代でさらなる飛躍を遂げる
総数だけではイメージが掴みにくいかと思うので、具体的な例を挙げます。2006年に発売された『ゼルダの伝説 トワイライトプリンセス』は、これまでに750万本を売り上げました。言うまでもなく、文句のつけようがないほどの大ヒットです。
しかし、スイッチと同日(2017年3月3日)に発売された『ゼルダの伝説 ブレス オブ ザ ワイルド』は、累計で3115万本もの販売本数を叩き出し、本シリーズ最高の記録を刻みました。『ゼルダの伝説 トワイライトプリンセス』と比べ、なんと4倍以上の伸びです。
加えて、その続編として2023年5月12日にリリースされた『ゼルダの伝説 ティアーズ オブ ザ キングダム』も1950万本を販売しており、こちらも1000万本のラインを軽く突破しました。
ちなみに、続編で数字が大きく下がっているようにも見えますが、『ゼルダの伝説 ブレス オブ ザ ワイルド』は6年以上の月日をかけて積み上げた結果です。一方『ゼルダの伝説 ティアーズ オブ ザ キングダム』は、発売から半年足らずのデータなので、単純に数字だけを比べるのはナンセンスでしょう。むしろ、短期間でここまで売り上げた勢いに驚くほかありません。
また、スイッチ世代で急激に伸びたのは『ゼルダの伝説』だけではありません。Wii U向けに登場した『マリオカート8』は846万本ですが、スイッチ版の『マリオカート8 デラックス』は5701万本を超えており、スイッチ史上最も売れたゲームとして名を馳せています。
『ゼルダの伝説』や『マリオカート』は、元々高い人気を誇るシリーズですが、過去の作品と比べても、スイッチ世代の各タイトルが大幅に伸びていることが分かります。特に『マリオカート8 デラックス』は、完全新作ではなくパワーアップ版とも言うべきソフトなのに、それが5000万本を超えるのは驚愕の一言です。スイッチ世代で見えた人気作の伸びは、まさしく「異変」なほどです。
●世界規模で順調なスイッチ。この勢いを受けて、任天堂はどう動くのか
一般的なゲーム機の現役期間を超えながら、前年や前々年を超える右肩上がりで伸び、人気作もさらに飛躍していく。そんな異変続きのスイッチを後押しした理由のひとつは、日米欧以外の市場が活性化しているためです。
かつては、日本市場はもちろん、人口の多いアメリカ市場、広く展開できるヨーロッパ市場が中心的で、スイッチ発売時の2017年3月期の時点では、この3市場以外の売上高の合計は249億円程度でした。しかし2023年3月期には、4倍を超える1387億円まで伸びており、アジアやオセアニアといった日欧米以外の市場もスイッチの躍進に大きく貢献します。
こうした広がりも手伝い、ニンテンドーアカウントの数は3億3000万アカウントを超えており、有料サービスの「Nintendo Switch Online」会員も3800万アカウントを突破。直近1年の年間プレイユーザー数も1億1700万以上を数え、スイッチが今も現役であることがデータからも窺えます。
スイッチは今年の3月3日で7周年を迎えるため、8年目への突入が秒読み態勢となりました。異変づくしの活躍ぶりはもちろん喜ばしい話ですが、この好評が後継機の登場を遅らせる一因となる可能性もゼロではありません。
スイッチフィーバーが長く続き過ぎて、次世代で遅れを取ってしまう──そんな展開は、任天堂も避けたいはず。しかし、後継機を発表してスイッチの勢いに水を差してしまうのも考えもの。実に悩ましいところです。
スイッチが好調なうちはこの路線を継続するのか、この勢いを後継機に繋げる一手を打つのか。2024年の任天堂の動きが、今後5年~10年のゲーム業界を大きく左右するかもしれません。
(臥待)