半世紀前の1974年を支配? アニメ・特撮にも多大な影響を与えた「2大ブーム」とは
独特の「怪鳥音」が脳裏に残るもうひとつのブーム
もうひとつのブームは、ブルース・リーによる「カンフーブーム」です。日本では1973年12月に公開された映画『燃えよドラゴン』が火付け役となり、それ以前から話題になっていたブルース・リーの知名度を一気に押し上げました。この時、ブルース・リーがすでに故人だったことが、逆に伝説化することに一役買います。
当時のブルース・リーは、間違いなくヒーローでした。それゆえに子供向けであるヒーロー番組の影響は、前述の終末論以上の広がりを見せます。このブルース・リーをモチーフにした主人公が、TVアニメ『破裏拳ポリマー』の鎧武士(よろいたけし)でした。
主人公を演じた曽我部和恭(当時は曽我部和行)さんには、スタッフからブルース・リー風の演技を注文されたそうです。そのため、曽我部さんは何度もブルース・リーの映画に足を運びました。印象的な劇中でのポリマーの独特の「怪鳥音」はその賜物というわけです。ちなみに怪鳥音とは、ブルース・リーの独特の掛け声のことを指します。
この怪鳥音といえば、個人的にはTV特撮『電人ザボーガー』の大門豊を思い出します。筆者の学校では一大ブームで、男の子は大門の怪鳥音はもちろん、戦う時のブルース・リーを思わせる表情も真似したくらいです。
この大門を演じていたのが、前年に放送されていたTV特撮『仮面ライダーV3』で結城丈二/ライダーマン役だった山口暁(後に山口豪久へ改名)さんでした。当時の子供たちは、この大門の演技ですっかりイメージを上書きされたことと思います。
もちろん主役はタイトル通り、ロボットであるザボーガーなのですが、大門自身も「飛竜三段蹴り」という必殺技を持っており、敵のサイボーグと戦う場面が多いことから子供人気が高いヒーローでした。
これらに、前述の『ウルトラマンレオ』が加わるわけです。こういったカンフーブームに影響された子供番組が多いのは、やはり明るくてヒーロー向けの素材だからでしょう。企画で終わりましたが、『仮面ライダーアマゾン』の仮称には「ドラゴンライダー」というものがあります。
放映された『仮面ライダーアマゾン』のアマゾンライダーはマダラオオトカゲという架空の動物がモチーフですが、爬虫類ということで少なからず影響を与えているでしょう。劇中のアマゾンの戦い方は野生児のそれですが、ブルース・リーとも共通点がいくつかあります。
そう考えると、「ウルトラシリーズ」と「仮面ライダーシリーズ」という2大特撮シリーズに影響を与えたわけですから、ブルース・リーによるカンフーブームがいかに大きなものだったかわかるでしょう。
最後に忘れてはいけないヒーローがもうひとりいます。「和製ドラゴン」と呼ばれた倉田保昭さんです。倉田さんが主演を務めたドラマ『闘え!ドラゴン』は、特撮番組ではありませんでしたが、原作・脚本はあの伊上勝さんで子供には大人気だったTV番組のひとつでした。
さらに倉田さんはドラマ『バーディー大作戦』でも、後半からドラゴンという役でレギュラー出演します。そして後番組となる『Gメン75』にもレギュラー出演し、「香港カラテロケシリーズ」では主導的な活躍を見せて人気となりました。
いつの時代も流行したものはありますが、半世紀前の1974年は陰の終末論と、陽のカンフーブームが特に印象的な1年だったと思います。
(加々美利治)