マグミクス | manga * anime * game

なぜ?『ドラゴンボール』敵キャラに「2人組」が目立つ理由とは

『ドラゴンボール』で敵キャラが登場する際の人数について、言われてみると「なるほど」と思う設定が多くあります。悟空たちが戦いを繰り広げる敵キャラには、なぜかふたり組が多いのです。『ドラゴンボール』の敵キャラクターはなぜ、ふたり組が目立つのかについて考察しました。

もしひとりで登場したら、しらけてしまうかも?

ナッパとふたりで登場した敵だったベジータ。やがて味方に。画像は映画『ドラゴンボール超 ブロリー』キービジュアル (C)バードスタジオ/集英社  (C)「2018 ドラゴンボール超」製作委員会
ナッパとふたりで登場した敵だったベジータ。やがて味方に。画像は映画『ドラゴンボール超 ブロリー』キービジュアル (C)バードスタジオ/集英社  (C)「2018 ドラゴンボール超」製作委員会

『ドラゴンボール』の敵キャラには、天津飯と餃子から始まり、ベジータとナッパや人造人間19号と人造人間20号、あるいは人造人間17号と人造人間18号などの「ふたり組」が目立ちます。その背景にはいったいどのような理由があるのでしょうか。

「週刊少年ジャンプ」元編集者で、『アイシールド21』『銀魂』『黒子のバスケ』などを担当した齊藤優さんは、公式サイト内のブログで『ドラゴンボール』を例にこう語っています。キャラを「ふたり立てる」理由は、単純に「描ける事柄が圧倒的に増えるから」だといいます。ほかにも、ふたり組にすることで、敵同士の会話が生まれ、そのシーンの主旨などを読者にそれとなく伝えることもできるという利点もあります。

 齊藤優さんは、実際にベジータとナッパを例に挙げています。賢くていつも冷然としているベジータに対して、ナッパはちょっとおとぼけで短気な性格です。このふたりのキャラを対比させることで、セリフが生まれたり描ける事柄が増えたりするといいます。もしベジータがひとりきりで登場すると、場面説明のために、独り言をひたすらべらべらとしゃべるという不自然なシーンになってしまいます。

 実際に描かれた例として、ベジータとナッパが地球に襲来したときの展開を見てみます。地球に降り立ったベジータとナッパが派手に襲撃を仕掛けます。そこでナッパは「ふははははっ!!! ちょっとあいさつがていねいになりすぎちまったかな!!」というセリフを放ち、これに対してベジータは「もうこれぐらいにしとくんだなナッパ……」「あまりハデにやらかすとこの星が高値で売れなくなるぞ」と釘を刺します。

 このセリフをベジータひとりでしゃべったと仮定すると、こうなります。「くっくっくっ……ハデにやりすぎたかな……もうこれぐらいにしておくか」「この星が高値で売れなくなるとマズいしな……」と、ベジータが冷徹に独り言を語るだけで、ナッパがいるときよりも盛り上がりに欠けるシーンになりそうです。

 では、敵キャラは「ふたり」が適切なのでしょうか。3人、4人と増えれば、会話のキャッチボールが生まれ、物語がさらにいきいきとしてきそうです。ですが、齊藤優さんの考えでは、「決して多いほうがいいとは限らない」といいます。「魅力的なキャラクターを活かし、読者に必要な情報を自然に伝えながら、ストーリーを興味深く読ませるために適切なキャラ数」と「展開されるストーリーに必要最小限のキャラ数」が一緒とは限らないと、プロの作家から学んだそうです。

 登場する主人公側のキャラや、敵側のキャラの数は、漫画家と編集者などの作り手のさじ加減によるものと思われます。『ドラゴンボール』の敵キャラにふたり組が目立つのは、その「関係性」から魅力的なストーリー展開が生まれ、より読者を引きつける要素になっているようです。

(LUIS FIELD)

【画像】えっ、忘れてた! こちらが「ドラゴンボール初期」の2人組キャラたちです(4枚)

画像ギャラリー