「責められない」「狂うのも分かる」 絶望不可避の体験で闇堕ちしたキャラたち
アニメやマンガで、やむを得ない形で悪に染まってしまった「闇堕ち」キャラたちの苦悩には思わず胸を痛めるシーンも多くありますが、傷つきながらも争う彼らの姿には心を揺さぶられます。今回は「心が痛くなる闇堕ちキャラクター」の3人を振り返りましょう。
「救いがなさすぎる…」胸をえぐる闇落ちキャラたち
マンガやアニメの素直で優しかったり、明るく前向きだったりする善良なキャラクターでも、絶望的な出来事がトリガーとなり、「闇堕ち」してしまうことがあります。今回は、心が痛くなる理由で凶行に及んだ「闇堕ちキャラクター」を3人振り返りましょう。
●『School Days(スクールデイズ)』:桂言葉
『School Days』は、オーバーフロー発のアダルトゲームが原作で、2007年にTVアニメ放送された作品です。
主人公の伊藤誠はごく一般的な高校生でしたが、同じ学園に通う意中の桂言葉(かつら・ことのは)と結ばれるために、同級生の西園寺世界(さいおんじ・せかい)に協力を仰ぎます。そして誠は言葉と付き合うことになりますが、誠は次第に世界を含む学園生活で関わる女性たちと、欲望のままに次々と関係を持っていってしまうのです。
そんな身勝手な誠は、肉体関係を持っていた世界に「妊娠した」ことを告げられるも冷たい態度をとり、彼女に包丁でめった刺しにされて殺されてしまいます。もともとはおとなしい性格の美少女だった言葉はこれを知り、精神が崩壊してしまいました。そして、誠の遺体から頭部を切り離し、誠との子を身ごもったと嘘をつく世界を殺害するのです。
さらに、世界の腹を切り裂き子供ができていないことを確認して「なかに誰もいませんよ」という、狂気的なセリフを残しました。恐ろしい場面ですが、誠の頭部を大事に抱え「やっと…ふたりきりですね。誠君」と呟く彼女の一途な姿には、思わず胸を締め付けられるでしょう。
●『東京喰種トーキョーグール』:金木研
マンガ『東京喰種トーキョーグール』は、石田スイ先生が描く、人を襲って食べる喰種(グール)と人間の共存する世界を舞台にしたダークファンタジー作品です。2011年から2018年まで「週刊ヤングジャンプ」(集英社)で連載されました。
主人公の金木研(以下、カネキ)は、大人しく真面目な読書好きの平凡な大学生でしたが、喰種に襲われた事件で命を落としかけ、喰種の内臓を移植されて半喰種へ変えられてしまいます。人間の理性を持ちながらも、喰種の本能からくる欲望との間に葛藤する日常を送るなか、彼はアオギリの樹という喰種の組織に拉致されてしまいました。
そして、カネキは同組織メンバーの「ジェイソン」ことヤモリに足の指を切断されたり、ムカデを耳に入れられたりといった拷問を受け、喰種の能力で再生したらまたそれを延々と繰り返され続けるという狂気的な拷問をされます。髪の毛は真っ白に変わり果て、ついに人生に絶望したカネキは喰種の神代利世(かみしろ・りぜ)を捕食し、喰種として覚醒する決断をしました。
覚醒後のカネキは、元の優しい性格からは想像もつかないほど冷徹な性格となり、ヤモリに拷問をやり返すなど残虐な戦い方をするようになります。人とグールとの間で苦悩し悶え苦しんだ末、大切なものを守るために喰種になることを選ばざるを得なかったカネキの運命は、物語の冒頭のセリフ「もし仮に僕を主役にしてひとつ作品を書くとすれば、それは、きっと…悲劇だ」の言葉通りだったのかもしれません。
●『幽☆遊☆白書』:仙水忍
マンガ『幽☆遊☆白書』の主人公の浦飯幽助は、ある日道路に飛び出した子供をかばって交通事故で亡くなりますが、霊界探偵として生き返り、様々な妖怪や人間との戦いを経験し成長していきます。霊力を使った能力を駆使した技や、迫力あるバトルシーンが描かれ、連載終了から30年近く経ってからも実写化されるほどの人気作です。
そんな本作の後半の「魔界の扉編」で登場する仙水忍は、登場した時点で闇堕ちしていたひとりです。もともとは妖怪を憎んでいた真面目な人間で、幽助の前任に当たる霊界探偵だった仙水ですが、任務の最中、妖怪たちへの殺戮や拷問をする人間たちの醜い姿を見てしまい、自分の守ってきた「人間」という存在の価値を見失って、心が崩壊してしまいます。
その後、霊界の巨大資料館に保管されていた人間のあらゆる残忍な行為を記録したビデオ『黒の章』を盗み、行方をくらましました。そして、7種類の人格を持つ多重人格者となり、人間界と魔界とがつながるトンネルを開いて人類を滅ぼそうとします。純粋すぎて病んでしまった仙水が、幽助たちのようにいい人間と出会えていたらと思うと、胸が痛むエピソードでした。
(LUIS FIELD)