ベジータの「貴様」にロケット団の「やな感じー」…実は台本になかった声優たちの名アドリブ
アニメキャラのセリフは脚本家によって考えられたもので、それを読み上げるのが声優の仕事……というのが一般的な常識でしょう。しかし声優によっては、即興で台本にはない演技を入れてくることもあるといいます。それどころか、アドリブから生まれたセリフが「名ゼリフ」として語り継がれるようになることも珍しくありません。
あの有名なセリフも実は「偶然の産物」だった?
「オッス、オラ悟空!」は今でこそ『ドラゴンボール』を象徴するセリフとして有名ですが、もともと原作には一切登場していません。実は悟空役を演じる野沢雅子さんのアドリブによって生まれたものだったのです。
このようにアニメ界隈では、声優のアドリブによって「原作にはないセリフ」が数多く定番化してきました。実際に声優たちがどんな「名ゼリフ」を生み出してきたのか、振り返ってみましょう。
たとえばTVアニメ『ちびまる子ちゃん』では、前半のパートが終わり、CMが流れるところで「後半に続く」というナレーションが入ることでおなじみです。同作ならではのユーモアを感じさせる名フレーズですが、実はこれはアニメスタッフの考案ではなく、キートン山田さんのアドリブで生まれたものでした。
山田さんが過去にゲスト出演した番組『ノンストップ!』で語ったところによると、あるときのリハーサルで、CMの前に少し隙間があったため「見ている人に分かりやすく」という意図で件(くだん)のセリフを入れたそうです。そしてこれを原作者のさくらももこ先生が「本番でもいってください」と採用したことで、およそ30年にわたってお茶の間を温める名ナレーションが生まれることになりました。
なお『ちびまる子ちゃん』の収録現場では、さくら先生の意向によりアドリブが禁止されていたというウワサがあります。それが真実であれば、キートン山田さんのアドリブが例外として認められたわけで、それだけ作品の世界観にぴったりなアドリブだったということかもしれません。
また「ドラゴンボール」シリーズに登場するベジータの「貴様」呼びも、担当声優である堀川りょうさんのアドリブによって生まれました。往年のファンにとってはもはや常識かもしれませんが、当初のベジータは原作で「お前」や「テメエ」などの二人称を多用しており、「貴様」と統一されたのはアニメ版が最初となっています。
ベジータが登場した当時、アニメが連載に追いつきかけていたこともあって、現場でさえ先の展開が読めていない状況でした。そんななか、堀川さんはベジータが早々に退場すると予想して、安っぽい悪役にならないようにと「貴様」を採用したのだそうです。