マンガの定番「粉じん爆発」は何で知った? 各年代で分かれる「状況打破」の手段
「粉塵爆発」という言葉を、マンガ・アニメで知った方は多いはずです。一体、どのような使われ方をしてきたのか年代別にみてみましょう。
フィクションのなかで受け継がれる不思議で危険な科学現象

義務教育で教わってはいないのに、なぜか私たちは「粉塵(じん)爆発」を知っています。
粉塵爆発とは「可燃性の粉じんが空気中に浮遊している状態で着火源の存在により爆発を起こす現象」(引用:株式会社住化分析センター)です。
2015年には台湾の遊園地で粉塵爆発が原因とみられる爆発事故が発生し、229人が負傷する大惨事となりました。また金属を扱う工場でもたびたび粉塵爆発による事故も発生しており、現実では極めて危険な現象です。
では、私たちの多くがこの現象をそうした事故のニュースで知ったかといえば、おそらく違います。マンガ、アニメで知ったという方がほとんどではないでしょうか。
直近の例では、2024年1月13日深夜放送のアニメ『薬屋のひとりごと』14話にて、劇中で生じた爆発事故の原因が「粉塵爆発」と明かされると、ネットはにわかに盛り上がり「自分が初めて粉塵爆発を知った作品」を挙げる流れすら発生しました。
普段は耳慣れぬ「粉塵爆発」ですが、この現象が発生する作品は多数あります。年代別に具体的な作品を見ていきましょう。
1985年連載開始の『パイナップルARMY』(原作:工藤かずや、作画:浦沢直樹)で知った方も多いはずです。主人公の豪士らが追っ手から逃げる際、倉庫内で小麦を充満させて避難します。相手の発砲で、意図的に「粉塵爆発」を生じさせるという手段をとりました。まだ一般的な認知度が低かったからか、作中では「粉塵爆発を知っているとは何者だ?」といった旨のセリフも飛び出します。
1997年連載開始の『ARMS』(著:皆川亮二)もまた、多くの少年たちに「粉塵爆発」の威力を教えてくれました。主人公の高槻涼が敵組織を倒すべく、家庭科室にある小麦粉で粉塵爆発を誘導し、絶体絶命のピンチを切り抜けたのです。武装面で不利であっても起死回生の一手となる、創作における「粉塵爆発」の好例でした。
もちろん粉は「小麦粉」だけではありません。2001年に始まった『鋼の錬金術師』(著:荒川弘)を振り返りましょう。場所は閉鎖された下水道で、錬金術の「分解」が可能な傷の男(スカー)は恐らく金属製の水道管を「粉塵」にし、水を「酸素」「水素」に分解して火花で着火します。なんとも『ハガレン』らしい、「粉塵爆発」を引き起こしたのです。
1980年代、1990年代、2000年代の作品を挙げてきました。この他にも『バキ』(著:板垣恵介)や、TVスペシャル版『ルパン三世』などなど、多くのアニメ・マンガに登場してきた「粉塵爆発」は、現実世界では危険極まりない現象ですが、フィクションにおいては敵に囲まれているような圧倒的不利の状況を打破しうる「手段」として受け継がれています。
「粉塵爆発」の認知度も上がり、ベターとなってきた現在、それを使うシチュエーションにも変化がつけられていくことでしょう。それを定点観測しても、無意味ではないはずです。
(片野)