『電子コミック大賞2024』を受賞した、「読んだら止まらない」3作品 新鮮なエンタメがここにある!
今回で7回目の開催となる『電子コミック大賞』の受賞作品が1月25日に発表されました。大賞のほかに「男性部門賞」「女性部門賞」などの部門賞もあり、数多くの注目作品が。そこで今回は、「大賞」「男性部門賞」「女性部門賞」に選ばれたマンガ作品をご紹介しましょう。
「殺し屋との契約結婚」「異常な間取り図」…斬新な設定は面白さも本物!
国内最大級電子コミック配信サイト「コミックシーモア」が主催する『みんなが選ぶ!!電子コミック大賞2024』の受賞作品が2024年1月25日に発表されました。
今回で7回目の開催となった『電子コミック大賞』は、各出版社が推薦する「翌年にヒットしそうな電子コミック」について、一般読者が投票して受賞作を決めるマンガ賞です。そこで今回は「大賞」に加え、「男性部門賞」「女性部門賞」から1作品ずつ取り上げ、その見どころを紹介します。
●大賞『ホタルの嫁入り』(小学館)
大賞に輝いたのは、2023年1月から「裏サンデー」で連載中の『ホタルの嫁入り』(作:橘オレコ)です。同作は絶対に交わらないはずだった令嬢の紗都子と殺し屋の進平が出会い、その後に「契約結婚」をするという、ラブサスペンスマンガです。
容姿端麗の紗都子は生まれつき病弱な体質で医者に先が長くないと宣告されており、生きている間に「名家の利益になる結婚」をすることを夢見ていました。しかし町に出た紗都子は謎の殺し屋にさらわれ、そのなかのひとりである進平に助けてもらうため、苦肉の策で「結婚しましょう」と提案します。
紗都子はその提案を受け入れた進平とともに殺し屋の追っ手から逃げ出します。進平は圧巻の刀さばきで敵を討伐しますが、彼には「メンヘラ気質」というギャップがあります。たとえば紗都子の父が結婚を認めないだろうと知った進平は「死のうかな」と言ったかと思いきや、「俺が死ぬのいや?」と紗都子に問いかけて自分に対する愛を確かめます。
さらに、紗都子に手を出す男がいれば「相手の男 やっちゃうよ」と言っているところから、束縛や独占欲も激しいタイプです。序盤では進平の狂気的な言動が目立ちますが、そうしたギャップにお互いに慣れ始めていきます。その後時折現れる進平の「デレ描写」は、本作の見どころといっていいでしょう。
また紗都子は「天女島」という遊女が集まる島に連れ去られていたので、「遊女になって裕福な男性に身請けしてもらう」という選択肢しか残っていませんでした。令嬢の紗都子が普段の生活に戻るため、さまざまな試練に覚悟を決めて挑む姿も見逃せません。
●男性部門賞『変な家』(一迅社)
男性部門賞に選ばれた『変な家』(原作:雨穴、作画:綾野暁)は「一迅プラス」などで連載されているマンガ作品で、80万部を突破した原作小説をコミカライズしたものです。
物語はオカルト専門ライターの「私」が、知人男性の相談に乗る場面から始まります。そこで見せられたのが「購入するか悩んでいる一軒家の間取り図」で、男性は1か所だけ「謎の空間」があることを伝えます。
後日、「私」はオカルト好きな建築設計士である栗原に謎の空間について話を聞くことになります。栗原はほかにも物件に不自然な箇所があることを告げ、「私」の新たな気づきもあり、彼は最終的に「この家は殺人のために作られた家」という仮説を導き出したのです。
衝撃的な栗原の考察を確かめるべく、「私」は怪しい一軒家の調査を続けていきますが、「怪しい一軒家の近くでバラバラ殺人が発生」「似た物件を知っている女性との出会い」など、ハラハラして目が離せない展開が続きます。
やはり一番のポイントは「不動産ミステリー」という新感覚のジャンルそのものにあるでしょう。建築設計士である栗原の「間取り」に対する推測や考察を追うだけでも、スリルを味わえます。物語冒頭では、怪しい一軒家の間取り図ともに「この家の異常さがわかるだろうか」というコメントが飛び出します。たった2ページで、間取りがもたらす「謎」に一気に引き込まれることでしょう。
なお、男性部門賞には同作品のほか、『正反対な君と僕』(作:阿賀沢紅茶/集英社)も入賞しています。空気を読んじゃう元気女子と、自分の意見をはっきり言える物静か男子という、正反対なふたりを中心に展開する、等身大のラブコメ作品です。
●女性部門賞『結界師の一輪華』(KADOKAWA)
『結界師の一輪華』(原作:クレハ、作画:おだやか、キャラクター原案:ボダックス)は、電子雑誌「B’s-LOG COMIC」で連載中の「異能×和風ラブファンタジー」作品です。
舞台となる日本には遥か昔から「五つの柱石」が存在しており、それがひとつでも欠ければ日本に災害が起こるといわれているため、各柱石は「一ノ宮・二条院・三光楼・四ツ門・五葉木」という5つの家系が守っています。
一ノ宮の分家である一瀬家には華と葉月の双子がおり、術者としての力に優れていた葉月は両親に期待されるも、術者の見込がない華は「落ちこぼれ」として相手にされませんでした。そしてある日、幼い頃から虐げられてきた華は強大な力が目覚めます。
それでも、今さら親に気に入られることは望まず、力を隠して静かに暮らすことを選ぶ華。一方で、本家の新当主となった一ノ宮朔(さく)は柱石の結界を強化するために伴侶を探しており、偶然にも華の術者としての能力の高さを知って、彼女に「契約結婚」を申し出ます。そして華は好条件だったのをいいことに、彼の申し出を引き受けるのでした。
見どころを挙げるならば、華が嫌っていた両親を見返す場面でしょう。手塩にかけて育てた葉月ではなく華が伴侶として選ばれたことで、これまでの苦労が水の泡となり、その事実を知った瞬間に言葉を失います。作中では辛い思いをしてきた華も描かれているため、彼女の「逆転劇」に心がスッキリするでしょう。ちなみに華が実家を出ていくとき、姉の葉月に「両親の言いなりにならず自分の生きたいように生きて」という思いを伝えていました。
また、いわゆるイケメンの朔は横柄な態度の目立つ「オラオラ系」ですが、華に対して「突然キスをする」「華の口についたパフェを指で取ってあげる」など女性なら「キュン」とするような行動の数々が描かれています。ほかに術者が作り出す「式神」と「妖魔」のバトルアクションがあるのも、本作の魅力のひとつではないでしょうか。
なお、女性部門賞には同作品のほか、『恋ヶ窪くんにはじめてを奪われました』(作:美麻りん/講談社)も入賞しています。趣味に没頭し恋愛を避けてきたアラサー女子が、年下のハイスペックイケメン男子に恋愛を教えてもらう(?)というラブコメ作品です。
今回紹介した受賞作品はいずれも、「コミックシーモア」内の『電子コミック大賞2024』特設サイトで、物語冒頭部分を期間限定無料で試し読みできます。
(LUIS FIELD)