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『Zガンダム』の革命的メカデザイン 「その後」を一変させた3つの「スタンダード」

「ムーバル・フレーム」でより緻密なメカニックが実現

モノコック構造のため箱をつなげたような関節の「ガンダム」。「エルガイム」まではこれが当たり前だった。画像はBANDAI SPIRITS「1/60 ガンダム」 (C)創通・サンライズ
モノコック構造のため箱をつなげたような関節の「ガンダム」。「エルガイム」まではこれが当たり前だった。画像はBANDAI SPIRITS「1/60 ガンダム」 (C)創通・サンライズ

 モノコック構造だった『機動戦士ガンダム』に対し『機動戦士Zガンダム』以降の『ガンダム』シリーズでは、永野護氏が考案した「ムーバル・フレーム(ムーバブルフレーム、Movable Frame)」という新しい構造が採用されています。これはロボット内部の骨格を設定し、その上に装甲が施されている様式のメカデザインです。

 これにより『ガンダム』を含むロボットアニメ全体のデザインは大きく変化しました。今では珍しくありませんが、ムーバル・フレームによりロボットアニメにおけるメカの骨格と装甲が分けられ、より人間らしい構造に進化したのです。

 もちろん現在でもモノコック構造のメカはありますが、全体的に関節の処理が複雑化し、本当に動きそうな整合性のあるものへと変わっていきます。この変化はプラモデルなどの立体物にも大きく反映されています。

●アイデアの初出は『重戦機エルガイム』

 後の『ガンダム』シリーズやロボットアニメに大きな影響を与えた全天周モニターとリニアシート、ムーバル・フレームが初登場したのは『機動戦士Zガンダム』ではありません。初出は『機動戦士ガンダム』(1979年)と『機動戦士Zガンダム』(1985年)の間に富野監督が手掛けた『重戦機エルガイム』(1984年)です。

 初めてムーバル・フレームを採用し、矛盾なく正座できる二重関節を実現したのは「エルガイム」、全天周モニターとリニアシートの原型(「スパイラルフロー」)は『エルガイムMk-II』に盛り込まれています。

 サンライズやバンダイが監修を努めるムック本『グレートメカニックG』(双葉社)などの資料によれば、全天周モニターとリニアシートに関しては富野監督がアイデアを出し、『重戦機エルガイム』のデザイナーだった永野護氏が形にしたとされています。

 永野護氏はムーバル・フレームを生み出した『重戦機エルガイム』に続き、『機動戦士Zガンダム』でも「リック・ディアス」や「キュベレイ」「ハンブラビ」など多くのメカデザインを手掛けています。その影響は大きいといえるでしょう。

●優れたデザインが生まれるには時間がかかる

 富野監督は1985年に角川書店から出版されたムック本『重戦機エルガイム 2 ザテレビジョンアニメシリーズ』に掲載された「異星人たちへ」という文章の中で、全54話にも及ぶ『重戦機エルガイム』を若手クリエイターたちの教育に使ったと認めています。

 もしも『機動戦士ガンダム』の直後に『機動戦士Zガンダム』が制作されていたら、これらの革新的メカデザインは存在しなかったかもしれません。『重戦機エルガイム』での蓄積がビッグタイトルである『機動戦士Zガンダム』に盛り込まれたのです。

 リッチな教育環境が人材を育て、優れたデザインを生み出し、後の『ガンダム』ユニバースを豊かにしたといえるのではないでしょうか。

(レトロ@長谷部 耕平)

【画像】今でもかっこいい!新機軸が盛り込まれた富野監督作品のメカを見る(6枚)

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