“本家”上陸前に作られた和製「スター・ウォーズ」2作品。映像界に残した遺産とは
ふたつの和製「スター・ウォーズ」がもたらしたもの
今回紹介した2本の映画は、メインスタッフが本家『SW』を鑑賞した上で製作されています。『惑星大戦争』はゴジラシリーズでも見られた異星人による侵略との戦い、『宇宙からのメッセージ』は時代劇と、東宝と東映のそれぞれが得意とするジャンルで『SW』をアレンジしていたことがわかります。
『惑星大戦争』の“轟天”の乗組員たちが国連宇宙局に所属するエリートで、大きな使命を抱いて戦っているのに対し、『宇宙からのメッセージ』のリアベの勇者たちのなかには宇宙暴走族やチンピラが含まれます。このような人選からも、東宝と東映の会社のカラーの違いがわかります。また『SW』のアイコンのひとつである“ライトセーバー”を模したアイテムが、両作ともに登場しなかったのが興味深い点でしょう。
東映は『宇宙からのメッセージ』から映像やプロップを流用したTVシリーズ『宇宙からのメッセージ 銀河大戦』(1978年)を製作。こちらはフランスで『San Ku Kai』のタイトルで放送され人気を博します。東通ecgシステムは『宇宙刑事ギャバン』(1982年~1983年)など東映が製作するヒーロー作品で多用され、独自の映像を生み出すのに貢献しました。またスーパー戦隊シリーズの第41作『宇宙戦隊キュウレンジャー』(2017年~2018年)のイメージソースのひとつは本作『宇宙からのメッセージ』です。
一方『惑星大戦争』のファンを公言しているのがアニメーション監督の庵野秀明氏です。本作の轟天に搭載されていたリボルバー式カタパルトを、庵野監督は代表作『ふしぎの海のナディア』に登場するN‐ノーチラス号にも搭載させて本作へのオマージュを捧げています。
結果として、2作品とも興行収入や作品のクオリティで言えば『SW』には敵いませんでした。今回取り上げた2作品を『SW』の便乗映画として切り捨てるのは簡単です。しかし『惑星大戦争』も『宇宙からのメッセージ』も共に日本の特撮作品やアニメ作品の血肉となっているのです。
公開から40年以上の時が経った『惑星大戦争』と『宇宙からのメッセージ』。本家『SW』の話題が上がれば、この2作品の話題も同時にネット上に登場します。多くの映画が忘れ去られていくなか、40年の時を経ても人びとの記憶に残っているというのは、幸せなことなのかもしれません。
(森谷秀)