大改変は裏番組のせい? 『ミラーマン』が途中から「副業」を始めた理由
怪奇大作戦+変身ヒーローで円谷プロの新機軸を期待されていたが
『ミラーマン』第1話「ミラーマン誕生」は27.1%という高視聴率でした。裏番組『シルバー仮面』を大きく引き離して、幸先のいいスタートを切ります。『シルバー仮面』の内容が暗くて地味な部分もあったため、視聴者は『ミラーマン』に流れたようです。
ところが回を追うごとに『ミラーマン』の視聴率は下降気味になり、放送開始から3か月後には19~15%前後に落ち込みます。一方の『シルバー仮面』は、第11話から『シルバー仮面ジャイアント』にリニューアルし、等身大だったシルバー仮面が巨大化して星人と戦います。
いち早く「てこ入れ」をおこなった『シルバー仮面』は視聴率がアップし、その分『ミラーマン』の視聴者が下がることになるのです。実は『ミラーマン』は『シルバー仮面』に負けないくらい地味でした。
まずミラーマンは外見のモチーフが鏡なだけにベースが銀色で、緑のラインが所々にあるだけです。また、インベーダーはウルトラマンの怪獣や星人のように、表立っては町を攻撃しません。人知れず侵略がおこなわれるので、戦いも静かに進行します。ウルトラマンのような低年齢層が喜ぶ要素を、あえて排除していたのです。
企画段階でミラーマンはウルトラマンと差別化し、小学校中学年から中学生までをメインターゲットにして、よりSF色の強い作風を目指していました。そのためSGMは『怪奇大作戦』のSRI的な組織となり、武装する必要がなかったのです。
『ウルトラQ』の世界に巨大変身ヒーローを足したのが『ウルトラマン』なら、『怪奇大作戦』に巨大変身ヒーローを足したのがミラーマンです。また違う新機軸になることを期待されていました。
ところが「てこ入れ」のため、結果的にウルトラマンとの違いが曖昧になります。ある程度視聴率は回復したものの、『シルバー仮面』終了後に始まった『アイアンキング』に視聴率を追い抜かれてしまいます。結局、最終回こそ17.8%だったものの、終盤は11~14%となり、視聴率が回復することはありませんでした。そして、『ミラーマン』はシリーズ化できないまま終了します。
しかし、ミラーマンのてこ入れには思わぬ副産物がありました。それは武装化したSGMです。
円谷プロが他局で製作した1973年『ジャンボーグA』の第32話から、ジャンボーグAの組織PATにSGMのメンバーがジャンボフェニックスとともに参戦します。他局のドラマにも関わらず、『ミラーマン』の世界と奇跡のリンクを果たしました。主要スタッフ陣が『ミラーマン』と全く同じだったからこそ実現したコラボでした。
視聴率のため大幅な路線変更を余儀なくされた『ミラーマン』は、てこ入れがなければ、硬派のSF特撮ドラマとして独自のスタイルを貫いていたかもしれません。
(LUIS FIELD)