再アニメ化『ダイの大冒険』に大人が興奮する理由 必ず話題になる「ポップ」の存在
「ポップ」が必ず語られる理由

さて、『ダイの大冒険』と言えば、必ず話題になるのがダイの親友、魔法使いのポップです。登場したばかりの頃は、それなりの魔法は使いこなせるものの根性がなく詰めが甘く、厳しい修行は嫌がってモンスターにおびえ、ピンチとなればすぐ逃げだすという典型的な「ダメな」キャラクターでした。
脚本担当の三条陸氏によると、ジャンプの編集者からも「こいつはさっさと殺そう」と言われていたのを必死で止めていたそうです。それがさまざまな人との出会い、数々の戦いを経てメドローア(極大消滅呪文)を身に付け、最後は自ら大魔道士を名乗れるほどの実力者へと成長を遂げました。
大魔法バーンとの戦いの際にもヒュンケルやクロコダインら歴戦の勇士たちから切り札として期待を一身に集め、最終決戦では自ら盾となって「天地魔闘の構え」を受けきる姿に序盤の情けない姿などみじんも感じられません。
作中には竜騎将バランと王女ソアラの息子であるダイ、勇者パーティの娘であるマァム、パプニカ王国の王女であるレオナなど、優れた血筋のキャラクターたちが大勢登場し、活躍します。そんななか、村の武器屋の息子でしかないポップが勇気と知恵を振り絞って戦い抜く姿に、当時の読者たちは強い共感を覚えていたのです。
また『ダイの大冒険』ではポップ以外にも一般人+αくらいのキャラクターが、それぞれできることをできる限りやり抜こうと奮闘します。特に筆者の印象に残っているのが、偽勇者パーティの魔法使い「まぞっほ」です。
クロコダインの襲撃を受けて逃げ出したポップの前に現れたまぞっほは、火事場泥棒をしているところを咎められるも意にも介さずに仲間にならないか誘います。「おれは勇者アバンの弟子なんだぞ!」と叫んだポップに「仲間を見捨てるような者でも務まるのかね? かの有名なアバンの使徒というのは……」と言い放った後の叱咤激励は、ポップが生まれ変わるために必要な、最初の一撃だったのでしょう。
さらに最後の最後、全てのキャラクターが全ての力を振り絞り、もう打つ手がないという絶望的な状況で仲間と共に再登場を果たした時、筆者は唖然としながらも震えるほどの感動を覚えました。
強くなりすぎたポップにはもうなれない。でも、まぞっほなら、誰でもなれる。必要な時が来たら、なけなしの勇気を振り絞ればいい。それをまぞっほが教えてくれた気がします。
もし、その時が来たら……。
君よ立て! 君よ行くのだ!
●「ドラゴンクエスト ダイの大冒険」特報映像
(早川清一朗)
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