【漫画】「SNSの外から見えにくいいじめ」で線路に飛び込む一歩手前 家族の行動に賛否両論
電車の線路に飛び込むのを、直前でとどまった女子高校生のユイ。そのまま帰宅し、部屋に閉じこもってしまいます。ユイの母は学校で何かあったのではと、カバンの中身を確認しますが特に変わった様子はありません。ユイの姉に相談すると、スマホを見れば何か分かるかもしれないと考えて……。作者のもつおさんにお話を聞きました。
いじめを認められず、苦悩する女子高生の運命は?
電車の線路に飛び込むのを、直前でとどまった女子高校生のユイ。学校へは行かず、部屋に閉じこもってしまっています。そんな姿を心配した母は、たまたま帰省していたユイの姉に相談します。以前、街で友達に会った日もユイの様子がおかしかったことを話すと、姉は「学校で何かあったのでは」と考えます。ふたりは部屋から出た隙に、こっそりとユイのスマホでSNSを見てみると、誹謗中傷する大量の書き込みを見つけます。元気がないのは、そのことが関係しているのかとユイに聞いてみますが……?
もつおさん(@mamimumemotsuo)が『学生時代のいじめに囚われる話』として、X(旧:Twitter)に掲載した『あの頃世界のすべてだった学校と自分への呪いにさよならするまで』(KADOKAWA)が話題です。今作は、自身の経験をモデルに描いたセミフィクションです。いいね数は5500を超えており、読者からは「本人も家族も苦しむのはつらすぎますね」「SNSとの向き合い方は難しい」「いい解決方法があればいいけど……」などの声があがっています。
もつおさんは漫画家として活動しており、今作以外にも自身の経験をモデルに描いたセミフィクション『精神科病棟の青春 あるいは高校時代の特別な1年間について』(KADOKAWA)が発売中です。
作者のもつおさんにお話を聞きました。
ーーX(旧:Twitter)に投稿した今作『学生時代のいじめに囚われる話』が生まれたきっかけや、理由を教えて下さい。
この作品は私の2作目のマンガ『あの頃世界のすべてだった学校と自分への呪いにさよならするまで』の一部です。デビュー作である前作は、高校生の時の経験を描いたコミックエッセイで、その作品中で学生時代の人間関係に悩んだことについて描いていました。
ーー特に『異変に気づいた姉』の話では、当事者だけではなく家族側からの視点も描かれていました。今作を描くうえでこだわったポイントや、思い入れのあるシーンなどはありますか?
デビュー作の出版後に、本を読んだ学生の方から「共感した」という内容のお手紙をいただくことが多くて、それをきっかけに「いじめ」や「学生時代の人間関係」をテーマにした作品を描いてみようと思いました。
『異変に気づいた姉』では、姉や母の行動にさまざまな賛否両論の意見をいただいて、私自身も改めて何が正しいのかと考えさせられました。
この話では「SNSでの外からは見えにくいいじめ」をテーマにしたかったので、鈍感な母と、対照的な姉を登場させて読者の方に説明をしながらいじめの発覚を描くようにしました。いじめ被害者の気持ちも、家族の心配する気持ちも、どちらも読んでいる人に伝わるようにセリフや表情など意識して描きました。
ーーたくさんの感想が寄せられています。特にうれしかった感想の声、印象に残った読者の声について、教えて下さい。
主人公が受けているいじめ問題に対して、解決策を考えたり、感情をぶつけたりしてくださる感想が多くて、自分も改めて参考になりました。作品を投稿したことで、いじめについて考えるきっかけが少しでも作れたなら良かったと思いました。
また、主人公に共感する声が多かったのも印象的でした。「自分も似たような経験をした」「同じ思いをしたことがある」など……。いまでも同じ状況や思いをしている学生の方がどこかにいると思うと、胸が苦しいです。
ーーいじめで苦しむ生徒を少なくするために、学生たち、周囲の大人や学校側はどのようなことをしていく必要があると思いますか?
とにかくまずは「気付く」ことが大事なのかなと思います。たとえ気付くことができなくても、当事者がSOSを出したときにはすぐに対処をできるようにしてほしいです。そのためにも「自分は関係ない」と思わずに、いじめ問題について考えること、知識や理解を広めることは必要だと思います。
ーー今作が収録された書籍『あの頃世界のすべてだった学校と自分への呪いにさよならするまで』(KADOKAWA)が発売されています。改めて、あらすじや見どころを教えて下さい。
学生だったときの自分の経験や、いろいろな人の学生時代の経験を聞きながら作った本です。この作品にはたくさんの登場人物が出てきます。それぞれの人物の立場に立って「自分だったらこうするな、ああするな」と考えながら読んでくださるととてもうれしいです。主人公のユイが悩みながらも成長していく様子を見届けていただきたいです。
ーーもつおさんがマンガを描き始めたきっかけを教えて下さい。
子供の頃からコミックエッセイが大好きで、ずっと読んでいました。高校時代の自分の経験をマンガにして、「新人賞に出してみよう!」と、大学生のときにコミックエッセイを描いたのが始まりです。
ーー今後、X(旧:Twitter)で発表される作品については、どのように活動していきたいとお考えでしょうか?
いままであまりX(旧:Twitter)での投稿をやってこなくて、最近になってゆっくりペースですが投稿を始めたところなので、まだ模索中ですが……出版から何年経っても本を手に取ってもらえるよう、自分の本の紹介もしながら本を描いた経緯など載せていけたらと思います。あと、それ以外にも日々のこととか描いていけたらいいなと思っています!
(マグミクス編集部)