ファミコンのディスクシステムにあった「謎の端子」 幻になりかけた「任天堂の構想」が?
まさかの復活? 「ファミコン本体」向けの通信機器が登場

市場で日の目を見ることがなかったディスクシステム向けの通信アダプターですが、1980年代の後半に差しかかると、ネットワークシステム構想を叶える周辺機器が「ファミコン用」として登場しました。
1987年7月。証券会社の山一證券(当時)から「山一のサンライン」と呼ばれる製品が発売されます。ファミコン本体に通信アダプタを取り付け、さらにアダプタに通信カートリッジを差し込むことにより、電話回線を介して証券会社や銀行などへ接続できました。ゲームプレイがメインの用途であったファミコンで、株式の売買が行えるようになったのです。
その後、1988年ごろから通信アダプタと通信カートリッジが続々と誕生します。この「ファミコントレード」と銘打たれた新潮流にのるべく、野村證券、新日本証券、コスモ証券などの証券会社はこぞって専用の通信カートリッジを発売。ゲームソフトを遊ぶための玩具という側面とは別に、証券取引に意欲的なユーザー層から注目を集め始めました。
なお、通信アダプタは「野村/任天堂」「マイクロコア」と大きく分けて2種類存在し、ホームバンキングや勝馬投票券の購入といった各種オンラインサービスも展開されました。
1980年代は部分的なサービスの実用化に留まっていたものの、ファミコンソフトのダウンロード、日用品のオンラインショッピング・学習塾との連動、株式売買など、画期的なネットワークシステムが想定されていました。現代では誰もが利用している情報通信サービスの源流が、「ディスクシステム」に残された小さな端子に垣間見ることができるのです。
(龍田優貴)