「ハリウッド版実写ガンダム」の知られざる舞台裏 困難極めた制作…富野監督が送ったエールとは
2000年12月29日にTVスペシャル番組として放送された「ハリウッド版実写ガンダム」こと『G-SAVIOUR』。その知られざる舞台裏とは?
『ガンダム』がアメリカ的ヒーロー物語に?
かつては着ぐるみや人形を少しずつ動かしたり、手で描くアニメで表現するしかなかった空想世界のロボットなどのSF映像。しかし、いまでは3DCGによって、まるで現実に存在しているかのような、リアルな映像が当たり前に作られるようになりました。
最近では、日本が得意としていた「ロボットアニメ」を、海外が次々と実写映像化し話題を集めています。また、半世紀近く人気を誇る『機動戦士ガンダム』を、いま、アメリカで実写映画化しているという話も聞こえてきて、ガンダムファンの方は「ついに!」という想いかもしれません。
しかし、実は今から25年前、すでに3DCGを使ったガンダムの実写作品があったのをご存じですか?
「ガンダム20周年記念作品」として、サンライズが発注、制作管理の元、ハリウッドの映画会社「POLESTAR」が制作し、2000年12月29日にTVスペシャル番組として一度だけ放送されたサンライズ初の海外製作作品『G-SAVIOUR』(ジーセイバー)です。
画像を見ていただければ一目瞭然の「ガンダム型」のロボットなのですが、この作品には『ガンダム』のタイトルが付いていません。また内容的にも、いわゆるガンダム風のセオリーとは全く違い、とても「普通」のアメリカ的ヒーロー物語として作られており、ガンダムファンのなかではあまり話題に上ることもありません。
ですが、実はこの作品にはとても大きな意味がありました。ちょっと込み入ったお話になりますが、おつきあい下さい。
当時は日本発のコンテンツによく似たものがアメリカで次々と映画化されていました。ですが、それは日本側にとってはあまり利はなく、今後、ガンダムにもそうした事態が起こることも予想されました。
そこで、アメリカでのガンダムの意匠(デザインやそのコンセプト等含め)使用に対して、しっかりと権利を守る必要があるという判断がされました。
アメリカの、映画をはじめとするこうしたエンターテイメントについての権利関係は日本とは全く違い「未来永劫全宇宙において」と契約書に表記してあるほど強固です。また、日本側から先にアメリカでの権利を押さえるためには、アメリカ側で実制作をしてしまう必要があったのです。