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鳥山明先生の訃報に触れて 偉大な実績と多忙さ、マンガを届けるための工夫とは?

『ドラゴンボール』と『ドラゴンクエスト』の作業を並行して進めた

初代『ドラゴンクエスト』パッケージ(スクウェア・エニックス)
初代『ドラゴンクエスト』パッケージ(スクウェア・エニックス)

『ドラゴンボール』連載の時期には、この忙しさがさらに加速します。並行してゲーム「ドラゴンクエスト」シリーズのキャラクター及びモンスターデザインを担当しており、なかでも堀井雄二氏が描いたドロドロのスライムのラフ絵を、水滴状にデザインしたセンスは天才というほかないでしょう。

 多忙を極めた鳥山先生ですが、可能な限り手間を省くための工夫も行っています。マンガの制作工程はセリフやコマ割り、キャラクターを大まかに配置したネームに始まり、下描きペン入れを経て完成しますが、『Dr.スランプ』の初期はあと少し手を入れれば完成品になると思えるような精緻なネームを制作していました。しかし、途中からは「3度も描くのが面倒」という理由でネームを省き、いきなり下描きから始めるようになっています。

『ドラゴンボール』の有名な工夫としては、悟空たちがスーパーサイヤ人になる際に金髪になるのは、髪の毛のペタ塗りを避けるためという例が挙げられるでしょう。また、スクリーントーンについては切ったり張ったりするのが面倒だからと、あまり使用していませんでした。

 ただし『ドラゴンボール』終了後に、『探偵 神宮寺三郎』などを手掛けたデザイナーの寺田克也氏に教えを請うなどして、CGの技術を身に付けた後はトーン処理を取り入れています。

 近年も、映画『SAND LAND』や『ドラゴンボール超 スーパーヒーロー』など、鳥山先生の作品を目にする機会は多々ありました。先生の絵はすでに3DCGで再現できる段階に入っており、おそらくはこれからさらに多くの作品が世に出るはずだったのではないでしょうか。おそらくある程度の準備は進んでおり、これから新作が発表されるのではないかと推測しますが、その場に鳥山先生がいないのは残念でなりません。

 鳥山先生の訃報を聞いてから、自分のなかに当たり前のように存在していた何かが消えうせた感覚がしています。鳥山先生は物心ついたときから、多くの喜びと楽しみを与えてくださいました。『ドラゴンボール』の連載時、先を争ってジャンプをむさぼり読んだ思い出は、かけがえのないものでした。私たちは、みんなが鳥山先生の息子であり娘でした。

 たくさんの思い出を、ありがとうございました。

(早川清一朗)

【画像】「天才的デザイン!」これがかっこよくてカワイイ、鳥山明先生によるメカ・モンスターです(7枚)

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