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「非モテ設定では」「最初から強そう」 主人公「イケメン化」が物議を醸した実写版映画

マンガの主人公は必ずしも美形ではなく、むしろそうではない見た目だからこそ読者が感情移入したり驚いたりするケースも多いです。しかし、それが実写化されると、原作よりも「イケメン」になってしまうことが多々ありました。

「イケメン過ぎて債務者に見えない」の意見も?

『ザ・ファブル』ポスタービジュアル (C)2019「ザ・ファブル」製作委員会
『ザ・ファブル』ポスタービジュアル (C)2019「ザ・ファブル」製作委員会

 毎年何作も作られるマンガの実写版では、物語を映画やドラマの枠に収めるための改変や、実写化するうえで生じる描写の変更などが話題になります。そのほかたびたび物議をかもすのが、「キャラクターの美形化」です。芸能人が演じる以上仕方がない部分もありますが、キャスト発表時から演じる人が美形であるがゆえに「設定がブレる」と言われることも少なくありません。

 今回は特に重要な「主人公のイケメン化」で有名な作品を振り返ります。

 マンガの実写版で何作も主演、主要キャラ役を務め、いわゆる「クズ役」がハマると評判の藤原竜也さんは、2009年から始まった「カイジ」シリーズ(原作:福本伸行)3作で、主人公の伊藤開司を演じました。カイジは騙されて連帯保証人になり借金を負った青年で、人生を変えようと悪徳な金融会社「帝愛グループ」が運営する非合法のギャンブル船「エスポワール」に乗り込むところから物語が始まります。

 キャスト発表時は「イケメン過ぎる」「これだけイケメンだと、ホストとかやって別の方法で借金返せそうな気がする」などの意見が出ましたが、今となっては「藤原竜也のカイジははまり役」という意見も多く、代表作のひとつとなりました。高い演技力で追い詰められたところから逆転するギャンブラーカイジを熱演し、「鉄骨の場面もEカードの場面も緊迫感と顔芸すごい」「例のビール飲むシーン、リアクション完璧」「似てないのに似てる」と評判を呼んでいます。ちなみに藤原さんは以前からプライベートでも競馬によく行くギャンブル好きで、「リアルカイジ」と呼ばれるようにもなりました。

 新井英樹先生原作の『愛しのアイリーン』は、連載終了から20年以上の時を経て2018年に実写化されています。同作では、「非モテ主人公」役を安田顕さんが演じることが発表され、「イケオジでモテそうなんだが」「もっとごつい人がやらないと」と、原作のイメージとの違いで疑問の声が相次ぎました。

 同作の主人公である宍戸岩男は、北国の農村で両親と暮らし、近くのパチンコ店で働く40代の独身男性です。長年女性と縁がない人生を送ってきた彼は同僚の吉岡愛子に想いを寄せるも失恋したことをきっかけに、貯金はたいてフィリピン人のアイリーンという女性とお金で買う形で結婚します。そして彼女を実家に連れて帰ったことがきっかけで、地獄のような騒動が巻き起こる……という物語です。

『愛しのアイリーン』は少子高齢化や田舎の農村の嫁不足などの問題を扱ったリアルな作品ですが、主人公の岩男は人の倍近い身体の大きさで、イノシシの身体を引きちぎるほどの怪力を持つというマンガ的なキャラクターでした。実写化に当たり、原作よりもだいぶ現実寄りのキャラクターになりましたが、鬱屈とした人生を送り、放送禁止用語を絶叫して、気弱でありながら暴走もする岩男を熱演しています。

「あそこまで爽やかさを消して気持ち悪さや悲壮感を出せるのはすごい」「死んだ目が見事」「ずっとイケメンを消していた分、中盤のキスシーンの美しさにやられた」と演技が絶賛され、作品も高い評価を受けました。

 また、「イケメン化」以上に「見るからに強そう」という点が物議を醸したのが、岡田准一さん主演で実写化された2019年公開の『ザ・ファブル』(原作:南勝久)でした。同作の主人公は「ファブル(寓話)」と呼ばれるほどにその凄腕が恐れられる殺し屋で、働き過ぎたことを理由に1年間休業し、誰も殺さずに一般人(仮名:佐藤明)として暮らすことを強いられるという物語です。

 原作のファブルは一見すると普通の男で、とても伝説の殺し屋には見えません。そんなギャップのある役を岡田さんが演じることが発表されると、「どう見ても一般人じゃないというか、ただ者じゃない感が…」「この人相手にチンピラがなめてかかることはないと思う」「顔がめちゃめちゃ強そう」と、困惑する声も少なくありませんでした。これは岡田さんが主演ドラマ『SP』をきっかけに武術を始め、カリやジークンドーなどのインストラクターの資格も持つ「ガチで強い人」として有名だったことも関係していたかもしれません。

 ただ、そんな邦画界屈指のアクションの実力者である岡田さんは、『ザ・ファブル』で主演だけでなく、戦闘シーンの振り付けなどを考えるファイトコレオグラファー(アラン・フィグラルツ氏と共同)も兼任し、作品のアクションのレベルを大きく底上げしました。役柄上、ファブルは戦闘時黒い覆面で顔を隠していますが、岡田さんは吹替なしで演じ、ハイレベルなアクションを見せています。原作よりもアクションの演出が全体的に派手になったことは賛否ありましたが、そのレベルの高さは話題になりました。

 特に、後半に見せた「建物の隙間を手足だけで一気に登っていく」場面は、誰もが度肝を抜かれたのではないでしょうか。その後のごみ処理場でのアクションでは、「手製の一発撃ったら手でスライドを引いて薬きょうを捨てなくてはいけない銃」を使いながらの銃撃戦と、リアルな近接格闘が繰り広げられます。しかも「相手を殺してはならない」という条件付きの難しい戦闘シーンを再現した岡田さんには、「大げさじゃなく目にも止まらないアクション」「これは岡田君にしかできんわ」「あの場所自体が危ないのにようやる」「マンガよりアクション派手めだけどこれはこれで好き」と、驚愕と称賛の声が相次ぎました。

 そして2作目の『ザ・ファブル 殺さない殺し屋』(2021年)では、原作にはない団地の工事現場の足場を使った驚愕のアクションも繰り広げられ、話題を呼んでいます。続編があれば、さらなる驚きのスタントも観られるかもしれません。

(マグミクス編集部)

【画像】え…っ? 主役も脇役も「イケメン化」が続々? これが話題になった実写版です(6枚)

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