『タッチ』だけじゃない! あだち充作品に見た、主要キャラの突然死「何度読んでも泣く」
一部のファンの間で、あだち充先生の作品には「登場人物の死がつきもの」といわれています。その代表格のマンガ『タッチ』以外にも、登場人物の死が描かれた作品が存在しました。読者に衝撃を与えた、そんな3作品を振り返ります。
身近な人の死を乗り越え、野球に打ち込む主人公たち
漫画家のあだち充氏は、昭和時代から現代に至るまで、多くのヒット作を世に送り出しています。そんなあだち氏が手がけた作品のなかには、主要キャラの「突然の死」が注目を浴び、大きな話題になったものもありました。
その代表例が、1981年から「週刊少年サンデー」で連載されたマンガ『タッチ』です。主人公の弟が突然事故死するという展開は、当時の読者に大きな衝撃を与えました。
その印象が強かったこともありますが、あだち充作品は人が死ぬのが定番だと思いこんでいる人もいるようです。そんなあだち充作品のなかから、主要キャラの死が主人公に多大な影響を与えた3作品を振り返ります。
1992年から1999年まで「週刊少年サンデー」で連載されていたマンガ『H2』では、主人公の国見比呂の幼なじみ、雨宮ひかりの母の死が描かれています。
当初、入院したのは盲腸を患った比呂の母親でしたが、比呂が食事を求めてひかりの家を訪れると、ひかりの母も過労で倒れて入院しました。
比呂が見舞いに訪れたとき、ひかりの母親は元気な姿を見せていましたが、入院して3日後、突然ひかりの母親は亡くなってしまいます。
ひかりの母親は、比呂のことを我が子同然に応援してくれた人物でした。そんなひかりの母の死は、実の娘だけでなく、主人公の比呂にも大きなショックを与えることになります。
そして生前応援してくれたひかりの母の期待に応えるため、比呂は本気で野球に打ち込むようになるのです。
そんなひかりの母の死について「何度読んでもこのシーンで泣いてしまう」「あまりにも淡々と死が描かれて逆に衝撃的だった」といった声も多く、読者に与えた影響の大きさが見て取れます。
マンガ『クロスゲーム』にも予想もしなかったキャラの死が描かれました。2005年から2010年まで「週刊少年サンデー」で連載された同作は、主人公の樹多村光と、彼の幼なじみである月島家の美人四姉妹を中心に描かれた野球マンガです。
四姉妹の次女の若葉は、光とまったく同じ日に生まれたこともあって特に仲が良く、両想いの関係でした。そんな彼女が光に与えた影響も大きく、超満員の甲子園のマウンドに光が立っていたという若葉の夢の話を聞いて、彼は本気で野球に取り組むようになります。
しかし、そんな若葉は、キャンプ中に川で足を取られた下級生を助けようとして激流に流され、突然亡くなってしまいます。
物語の冒頭でヒロインだと思っていた若葉が亡くなるという驚きの展開に「好きになった若葉ちゃんのまさかの死にすごく落ち込んだ」「タッチの和也の死よりもショックだった」といった声が読者からあがっていました。
『タッチ』の26年後を描いたマンガ『MIX』でも、主人公と近しい人物の死が描かれます。同作は2012年から小学館の『ゲッサン』に掲載され、2024年3月現在も連載中の作品です。
主人公のひとりである立花投馬は、父の英介が再婚したことにより、母の連れ子である走一郎と音美が新しい兄妹になりました。投馬と走一郎はまったく同じ日に生まれましたが、10分先に生まれた走一郎が兄になります。
そんな作品での衝撃の死のシーンは、高校2年の立花兄弟が甲子園出場をかけて地区予選の準決勝を戦っていたときに訪れます。
投馬の実父である英介は、その準決勝を観戦していましたが、トイレで心筋梗塞を発症しました。そして、まもなく亡くなってしまい、英介が死亡した時刻は、ちょうど投馬がホームランを打たれたタイミングでした。
息子の大一番の日に起こった悲劇について、「血のつながった唯一の肉親を失った投馬の気持ちを想うと辛い」「英介にはここで死んでほしくなかった」など、彼の死を惜しむ読者の意見が多数見られました。
上述した作品は、いずれも登場人物の死を乗り越えた主人公が、甲子園出場を目指すという部分が共通しています。言ってしまえば『タッチ』から続く、お約束の流れともいえますが、それぞれの作品ごとに異なるドラマがしっかり用意されており、同じ展開に見えないところが、あだち充氏のすごさといえるでしょう。
(LUIS FIELD)