壮大なSFアニメ『地球へ…』BS12で放映 原作者・竹宮惠子ら「花の24年組」が巻き起こした新しい風
萩尾望都さんの人気作も劇場アニメに

竹宮惠子さんが生み出したSFマンガ『地球へ…』の劇場アニメ化に続き、萩尾望都さんの人気マンガ『11人いる!』も、1986年にアニメーション化され、劇場公開されています。『11人いる!』の原作マンガは、『地球へ…』よりも早い1975年に発表され、少女マンガ初の本格SF作品となっています。
竹宮さんの『地球へ…』が壮大なロードムービーなのに対して、萩尾さんの『11人いる!』は宇宙船を舞台にした密室サスペンスとなっています。宇宙大学への最終試験として、10人の受験生が宇宙船で共同生活を45日間送るというものです。ところが、船内には受験生がなぜか11人いるため、彼らはお互いの正体を疑いながら、課題に挑むことになります。
直感力に優れたタダ、女の子のような容姿をしたフロル、リーダーシップのある王さま、貴族の生まれの四世……と、さまざまな星から集まった受験生たちの対立と友情を描いた青春ドラマとなっています。萩尾さんもお気に入りだったのでしょう。タダやフロルたちのその後を描いた『続・11人いる! 東の地平 西の永遠』を、1976年に発表しています。
萩尾さんがキャラクターデザインを手がけたSFアニメ『時空の旅人』も、1986年に劇場公開されています。また、大島弓子さんの人気マンガ『綿の国星』は、1984年に虫プロによって劇場アニメ化されました。1988年には異色ファンタジー『四月怪談』が、中嶋朋子さん主演作として実写映画になっています。
24年組ではありませんが、美内すずえさんの人気作『ガラスの仮面』は1984年にTVアニメ化され、和田慎二さんの『スケバン刑事』は斉藤由貴さん主演作として1985年にTVドラマ化されています。1980年代は、少女マンガ誌出身の漫画家たちが脚光を浴びた時代でもありました。
「大泉サロン」で過ごした青春の思い出
新人時代の竹宮惠子さんと萩尾望都さんは、東京都練馬区大泉の借家で、1970年から72年に共同生活を送ったことが知られています。二階建ての古い借家でしたが、「24年組」を中心にした女性漫画家たちやファンが集う交流の場となり、「大泉サロン」と呼ばれるようになりました。
借家の更新がきっかけで、「大泉サロン」は2年間で解散します。解散することになった経緯は、竹宮さんが自伝『少年の名はジルベール』(小学館)、萩尾さんが『一度きりの大泉の話』(河出書房新社)で、それぞれ語っています。クリエイター同士の、とても繊細な事情があったことが分かります。
竹宮さんと萩尾さんは、「大泉サロン」解散後はそれぞれの道を歩むことになりました。竹宮さんの『地球へ…』は、人類と新人類との憎しみの連鎖を描いていますが、物語の最後は和解の可能性を感じさせます。萩尾さんの『11人いる!』では、タダやフロルたちは葛藤を重ねつつ、信頼関係で結ばれていきます。どちらの作品も、多感な青春時代に味わった挫折感だけでなく、新しい旅立ちへの希望も託されているように思えます。24年組の旅は、まだまだ続いているのかもしれません。
(長野辰次)