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【漫画】「友達を殺した」太陽を食べてしまった怪物 優しい理由に5万人が「泣いた」

太陽のことが嫌いで食べてしまった怪物。食べられた太陽はお腹のなかから理由を聞きました。すると「友達を殺した」からだと言われます。しかし、そのことについてまったく心当たりがありませんでした。どうにかお腹のなかから脱出した太陽が困っていると、島に生えている新芽に声をかけられて……? 作者のしたら領さんにお話を聞きました。

怪物はなぜ、太陽を憎んだの?

太陽が嫌いな怪物(したら領さん提供)
太陽が嫌いな怪物(したら領さん提供)

 海の真んなかにいる怪物は太陽のことが嫌いです。雨が好きで、横暴な日差しに我慢ができなくなり、ついには太陽を食べてしまいます。お腹のなかの太陽がなぜ嫌われているのかと質問すると「友達を殺した」からだと怪物は言います。ですが、太陽はそのことについてまったく心当たりがありませんでした。

 どうにかお腹のなかから脱出した太陽が困っていると、島にポツンと1本だけ生えている新芽に声を掛けられます。さらに太陽を嫌いになった理由を教えてくれました。それは新芽が生えている島に、まだ一面の花が咲いていた2か月前のこと。怪物が花たちに「友達の作り方を教えてくれ」と言ったことがきっかけで交流がはじまります。しかし、晴れが続いていたある日、一本の花が体調不良になってしまい……。

 したら領さん(@shitara_ryo)による創作マンガ『太陽を食べてしまった怪物』がX(旧:Twitter)上で公開されました。いいね数は5.9万を超えており、読者からは「生命って絶妙なバランスで生きているんですね。考えさせられる」「ほぼすべての生命に必要な太陽でさえも見方を変えればこんな一面もあるんですね」「誰かにいいことはまた別の誰かにとっては害だったりしますよね」などの声があがっています。

 したら領さんは漫画家として活動しており、今作はしたら領さんの「note」に掲載されています。

 作者のしたら領さんにお話を聞きました。

ーー今作『太陽を食べてしまった怪物』が生まれたきっかけや、理由を教えて下さい。

 きっかけは怪物のキャラ造形からです。落描きしていたときに不意に生まれたキャラクターでした。そこから遊び半分でセリフを足していったら1話目ができました。それが始まりです。

ーー今作を描くうえでこだわった点や、お気に入りのシーンなどはありますか?

 こだわりはシンプルな線です。放っておくと、より緻密に……よりリアルに……となりがちなのですが。シンプルだけど感情が揺さぶられ、問いが残る作品を目指しています。

 お気に入りのシーンは1話目の4、5コマ目の怪物が太陽を食べるシーンです。アニメーションにしたら気持ちいいんじゃないかなと思います。

怪物のお腹のなかから太陽の声が(したら領さん提供)
怪物のお腹のなかから太陽の声が(したら領さん提供)

ーー怪物のキャラメイクが評判です。このキャラクター制作で工夫した点などはありますか?

 2D的でシンプルなキャラデザインを維持しながら、物語ろうとしている点です。しかしやはり物語に乗せると、いろいろな角度から演出する必要が出てくるので、1話目の怪物が一番デザイン的には優れていると思います。

ーーすべての生命に必要な太陽ですが、それぞれの立場から描かれているストーリー展開にも多くの反響がありました。作品に込めた思いなどを教えて下さい。

 私はどちらかというと、誤解されやすい方といいますか。ともすれば悪役だったり、加害者だったりにされがちな性格や、表情をしています。

 だからなのか、加害者側の事情が人生の関心ごとでもあります。加害者と被害者は表裏一体だと感じています。いつでもどちらにでも転ぶもので、それくらい善悪というのはあいまいなもので両面内包されています。そのあたりが今作のテーマなのかもしれません。

ーーそのほかにも、たくさんの感想が寄せられています。特にうれしかった感想の声、印象に残った読者のコメントはありましたか?

 悪意がなければ、基本的にどんな感想でもうれしいです。しかしそのなかでも特に記憶に残っているのは「神話みたい」というコメントです。人間は人間以外の生き物……ときには無機物や概念にでさえ、感情移入をできる生物です。そんな自分の範疇(はんちゅう)が広がる瞬間が好きなので、記憶に残っているのかもしれません。

ーーしたら領さんがマンガを描き始めたきっかけを教えて下さい。

 もともとは自主制作で絵本を描いていて、絵本作家を目指していたのですが。25歳頃に「バンドデシネ」と呼ばれるヨーロッパのコミックたちと出会いました。その出会いが衝撃で自分のなかで「マンガ」の枠組みが広がった瞬間でした。そのときから絵本とマンガの魅力を兼ねたマンガを描きたいと思うようになりました。

ーー今後、X(旧:Twitter)で発表される作品については、どのように活動していきたいとお考えでしょうか?

 私はまだまだ未熟で発展途上の作家ですので。引き続き、絵本とマンガの魅力の融合について試行錯誤していく所存です。近いところでいいますと『太陽と怪物』が終わった後には、ミッフィーのようなかわいらしい平和な世界観のなかに、悪意や不条理を練り込んだ作品を連載できるように構想中です(ボツになる可能性もありますが)。

 家族や親しい間柄であっても、結局は他人で、どこまで行っても違和感が横たわっていると思います。その辺りを切り取れたら良いなと考えています。

●したら領さんの「note」で掲載中の『太陽と怪物

(マグミクス編集部)

【マンガ本編】太陽を嫌い、食べてしまった怪物 優しい理由とは?

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