大人気マンガの「実写化」熱望される「インドの天才監督」とは? 「全部やって」
荒唐無稽なマンガの世界を実写化するには、数々の困難が立ちはだかるため、失敗してしまった作品や、原作が人気なのに実写化には至っていない作品も多々あります。そんななか、近年は「この人ならできるかも」と、数々のマンガ実写化で期待の声が出る海外の監督が現れました。
「マンガっぽさ」を表現できる、稀有な才能

人気マンガの実写版は毎年多数作られていますが、「実写化不可能」と言われ、人気ながらも長年実写化企画では手つかずの作品もあります。また、何とか実写化は実現するも、その世界観を再現しきれず賛否が巻き起こってしまったマンガもありました。
そもそも実写化は原作のファンからは心配される要素が多いですが、近年、「この人ならいろんなマンガ実写化できそう」と期待を集めている人物がいます。それは日本人のクリエイターではなく、世界中で旋風を巻き起こした『バーフバリ』2部作(日本公開2017年)、『RRR』(日本公開2022年)などのヒット作を手掛けたことで知られ、ファンからは「創造神」と呼ばれるインドの映画監督S・S・ラージャマウリ氏です。
日本でも絶大な人気を誇るラージャマウリ監督は、2024年3月18日に『RRR』の絶叫上映への舞台挨拶参加のために来日し、監督の名前がXでトレンド入りするほどの話題となりました。ド派手かつ丁寧で凝った演出と王道のストーリー展開で、どんな文化圏の人でも楽しめそうな一級のエンタメを作り出す監督ですが、特に日本人にウケる要素は、ラージャマウリ作品にある「マンガっぽさ」ではないでしょうか。
実際、『RRR』の日本宣伝の中心を担った株式会社マンハッタンピープルの原悠仁氏が、映画評論サイト『BANGER!!!』のインタビューで「ラージャマウリ監督はキラーショット(見開きのようなキメ絵)を大事にしていく作り方なので、『RRR』は、マンガやアニメに慣れ親しんでいる日本の観客との親和性が高い作品と言えると思います」と答えていましたが。たしかに監督の作品はそういった場面が多いと思います。
たとえば、『バーフバリ 伝説誕生』でのマヘンドラ・バーフバリと女戦士アヴァンティカのロマンティックな邂逅シーンや、後編『バーフバリ 王の凱旋』でのマヘンドラの父アマレンドラ・バーフバリが巨大な神輿を引っ張ってきて象の暴走を止めるシーン、アマレンドラとヒロインのデーヴァセーナが心を通わせながら弓矢を3本ずつ連射して戦う場面、マヘンドラが敵キャラのバラーラデーヴァが操る牛が引く戦車に真正面から突っ込んで互いに槍を投げ合うシーンなど、間違いなくマンガなら「見開き」「大ゴマ」になっていそうな描写が連続していました。
さらに後の『RRR』でも、W主人公のビームとラーマが少年を救出した後に橋の下で手を取り合うシーン、ビームと動物たちがトラックから飛び出してくる場面、松明を持つラーマとホースを持つビームが対峙するシーン、終盤の「肩車バトル」など、挙げればキリがありません。
そのほか、悪人に殺された主人公がハエに転生して戦う『マッキー』(2012年)は、設定から描写まで何もかもマンガ、アニメらしさを感じますし、『バーフバリ』の原点ともいえる歴史大作『マガディーラ 勇者転生』(2009年)も、400年の時を経て転生した男女の壮大なラブロマンス物語に「少女マンガっぽさ」を感じた人も多いようです。
ちなみにラージャマウリ監督はGIZMODOのインタビューで、「アクションシーンを作る時には、そのシーンの中でも一番『英雄的な瞬間』を切りだしてコンセプトアートにしています」と語っていました。日本の観客が「マンガの見開きっぽい」と感じる場面が多いのも納得です。
そして、特に2022年10月の『RRR』公開以降、ネット上で「ラージャマウリ監督に○○を実写化してほしい」という意見が一気に増え始めました。『刃牙』『ジョジョの奇妙な冒険』(特に1、2部)『魁!!男塾』『ドラゴンボール』など、過去に実写化されたもの含め男臭いジャンルを中心にさまざまな作品の実写化を熱望する声が相次いでいます。