『巨神ゴーグ』放送から40年 安彦良和氏が心血を注いだが、「コンセプト」が独特すぎた?
TV放送から40年の節目を迎えた『巨神ゴーグ』は、安彦良和さんの手によるロボットアニメでしたが、その内容は従来の作品とは異なる要素がふんだんに盛り込まれていました。その魅力について振り返ってみましょう。
従来のロボットアニメとは一線を画す作品
本日4月5日は、1984年にTVアニメ『巨神ゴーグ』が放映開始した日です。今年2024年で40年の時が経ちました。第二次ロボットアニメブームとも言われた時代に誕生した作品のなかで、もっとも独自の道を歩んだのが本作です。
本作の企画は、『機動戦士ガンダム』をはじめとする数々のアニメ作品に関わってきた安彦良和さんが主導して製作されました。その安彦さんの本作での役割は、原作、監督、レイアウト、キャラクターデザイン、メインメカデザイン、作画監督と多岐にわたっています。
当時のインタビューで、安彦さんは「TVに見切りをつける前に1シリーズやってみたかった」「TVアニメはこれで卒業」という自身の気持ちを吐露していました。それほどの気持ちで本作に挑んだというわけです。
そういう意味では、本作は安彦さんが関わったTVアニメ作品としては集大成と言えるのかもしれません。それゆえに普通のロボットアニメとは違う、一風変わった物語となっていました。
世界地図から消された「オウストラル島」を舞台に、亡き父の遺志を継いで島に隠された秘密に迫る少年「田神悠宇(たがみ ゆう)」が本作の主人公です。この悠宇が島にいた謎の巨人「ゴーグ」と出会い、数々の障害を乗り越えて秘められた謎を解き明かしていくというのが、本作の大まかな物語でした。
このゴーグがいわゆる主役ロボになるわけですが、当時のスタンダードな作品とはいくつも異なる部分があります。まずゴーグは自立型、いわゆる自分で考えて動くロボでした。悠宇はパイロットでなく、頭部などに生身のまま乗って指示を与える存在です。
これには安彦さんがゴーグという存在を、巨大ロボとしてとらえていなかったからでした。動物のゾウがイメージだったそうです。幼いころにゾウに乗った安彦さんが、その時の感覚と記憶からゴーグをインスピレーションしました。そう言われると、ゴーグと悠宇の関係はまさにゾウと人を思わせるものがあります。
また、ロボットアニメといえば毎回、敵ロボとの戦闘シーンがあるもの。しかし、本作は必ずしもそうではありません。何せゴーグが本編に登場するのは第4話からです。さらに言えば剣のような派手な武器での戦闘もありません。一応、銃火器を持ったこともありますが、基本的にゴーグは武器を持たない存在だからです。
こういったロボットアニメの常識から外れたのも、安彦さんが目指していたのはあくまでも「少年の冒険譚」だったからでした。それゆえにロボットアニメの決まり事だった侵略や戦争といったものからは縁遠い作品となったのでしょう。
もっとも、製作は順調に進みながらもストップがかかることになりました。本来なら1983年秋からのスタートになる予定が半年ほど遅くなります。これには、スポンサーとなった玩具会社タカラが『装甲騎兵ボトムズ』の放送中を避けたと言われているほか、いくつかの説がありました。
しかし、この放送が半年間延長となったことが、本作にとって幸運な出来事となります。