生成AIにクリエイター危機感 一方で「クリーンなら使いたい」の声も 共存への道は?
アニメ業界にも大きな影響を与えることが予想される「生成AI」。クリエイター側からは、著作権の問題や仕事を奪われるのではという懸念がある一方で、「クリーンなら使いたい」という声も。共存への道をアニメチェーン合同会社と、一般社団法人日本アニメフィルム文化連盟への取材を通じて迫ります。
クリエイターの懸念をいかに解消するのか
爆発的な速度で進化する生成AIは、アニメ業界にも大きな影響を与えることが予想されます。クリエイター側からは、著作権の問題や仕事を奪われるのではという懸念がある一方で、国内のAI開発業者は手をこまねいていては、海外のビッグテックに全て乗っ取られ、「日本のアニメ産業が一夜で崩壊してもおかしくない」という危機感を抱いています。
また、AIにはアニメ業界の人材不足を解消できるとの期待もあり、どうすれば懸念を払しょくしたうえでAIを良い方向に活用できるのかを考える必要があります。
マグミクスでは、「アニメと生成AI」というテーマで、倫理的なAIの開発を目指すアニメチェーン合同会社と、クリエイターの権利を守る活動を行うNAFCA(一般社団法人日本アニメフィルム文化連盟)に取材。
前編では、「(権利的に)クリーンなAIでないと実践で使えない」という現場の声や、「過去研究した成果を現場で引き継げない」アニメ業界の構造問題があることに加えて、クリエイターの中にも新たなツールとしてのAIに期待する声もあることを伝えました。
今回の後編では、アニメチェーンが現在のAI開発とクリエイター側の懸念をいかに解消できるのかを探ります。
生成AIの著作権的な問題
生成AIの著作権問題は、やや複雑に入り組んでいます。まず、AIによって既存のキャラクターを出力するようなものは単純に著作権侵害となります。大前提として、他者の作った既存のキャラクターを勝手に用いれば、手描きであっても著作権侵害であり、AIが利用されているかどうかという問題ではありません。
画像や動画を生成するAIを作るには、大きく分けて3つの工程があります。
1.基盤AIを作るための「学習」段階
2.特定の絵柄などを出力できるようにする「ファインチューニング」段階
3.実際に画像や動画を出力する「生成」段階
現在、最も大きな議論となっているのは、「1.学習」と「2.ファインチューニング」段階での学習素材の取扱いです。現在は著作権的に、学習のためだけならば権利者の許諾なく利用してよいとされており、法的には著作権的侵害ではありません。
しかし、生成AIの進化は恐ろしく早いこともあり、これを放置すれば、いずれはクリエイターの権利を侵害するのではという懸念がくすぶっており、改正の必要を訴える人もいます。
実際にNAFCAは、文化庁「AIと著作権に関する考え方について(素案)」にパブリックコメントを提出、AI開発のために学習の自由を認めることは重要としつつ、無秩序に既存の作品が学習されることに対しての懸念を伝えています。
(参照:パブリックコメント「『AIと著作権に関する考え方について(素案)』に関する意見」 | NAFCA 一般社団法人日本アニメフィルム文化連盟 https://nafca.jp/public-comment04/)