『Gガンダム』TV放送から30年 それまでの「ガンダム」を徹底的に壊したワケ
『Gガンダム』の隆盛がその後の歴史を変えた

それまでのファンからの期待はマイナスからスタートした『Gガンダム』。スポンサーであるバンダイ側からは「放映開始から3か月間は商売にならなかった」というコメントが残されています。当時を知る筆者の肌感覚もそうでした。
この状況を大きく逆転、打破したのが「新宿編」と呼ばれる、第12話から展開されたエピソードです。ここで『Gガンダム』の顔とも言うべきキャラクター「東方不敗マスター・アジア」が登場しました。その活躍は『Gガンダム』を「ガンダム」の呪縛から解き放ったともいうべきものだったのです。
ほかにも「ガンダム」シリーズ定番の仮面キャラクター「シュバルツ・ブルーダー」の登場、さらにヒロインである「レイン・ミカムラ」のファイティングスーツ装着という見せ場が続々と続きました。この展開で従来の「ガンダム」作品になかった、『Gガンダム』独自の面白さが、それまでのファンの意識を大きく変えたといえるでしょう。
さらに付け加えれば、従来のファン層とは違う層へも人気が広がっていったのも、この時期からかもしれません。それは「SDガンダム世代」と呼ばれる小学生層です。荒唐無稽に思えるほどの爽快なドラマ作りが、それまでのリアルゆえにわかりづらかった「ガンダム」シリーズへ興味を持つきっかけとなりました。
その勢いは掲載雑誌だった、講談社の月刊児童マンガ雑誌「コミックボンボン」の存在も大きく影響しています。「SDガンダム」の発信元だった「ボンボン」での評判が、人気に直結したと考えられるからでした。そして、この「ボンボン」で『Gガンダム』の漫画を連載していたのが、ときた洸一先生です。
ときた先生は以前から「ボンボン」で『プラモ狂四郎』や『超戦士ガンダム野郎』などのメカデザインを担当していた、いわば裏方にあたる存在でした。やがて『ザ・グレイトバトルIII』や『ガイアセイバー』といったゲーム原作のマンガを担当するようになり、本作『Gガンダム』のコミカライズで本格的なマンガ家デビューを果たしました。
このときた先生の画風が「ボンボン」での『Gガンダム』の人気を決定づけます。人気投票でベスト3に入るほどの支持を得て、おまけマンガとして描かれた『がんばれ!ドモンくん』も好評を得たことで、やがて同時連載の形となりました。この『がんばれ!ドモンくん』は好評だったことから、後のシリーズ『新機動戦記ガンダムW』『機動新世紀ガンダムX』でもタイトルを変えて続けられます。
ときた先生はその後もいくつかの「ガンダム」マンガを描いており、マンガというジャンルでの「ガンダム」シリーズへの貢献は計り知れません。これも、きっかけとなった『Gガンダム』が後世に残した偉業のひとつといえるでしょう。
もちろん『Gガンダム』が与えた影響はほかにもあります。本作が次世代のガンプラファンを増やしたことで、それまでのガンプラ愛好者をターゲットとしたハードル(組み立て難易度、価格)の高い商品「マスターグレード(MG)」の発売につながったと、「川口名人」として知られるBANDAI SPIRITSの川口克己さんが述べていました。
さらに主人公「ドモン・カッシュ」を演じた声優の関智一さんの熱演も忘れてはいけません。関さんにとって初主演となったドモン役は、独特のイントネーションと熱い叫びでファンから大きな支持を得ます。この後の関さんの活躍は、本作のドモンあってのものといえるでしょう。
しかし本作最大の功績は、以降の「ガンダム」シリーズを自由に構築できるほど大胆に改革したことでしょうか。シリーズというものは、どうしても従来の作品から激しく逸脱することを嫌うものです。その点で『Gガンダム』は、これまでとまったく違う「ガンダム」を提示しいました。その点で、これまでに『Gガンダム』ほど異質なガンダム作品はないでしょう。
結果的に多くのファンを生んだ『Gガンダム』。30周年の今年は、周年企画の展開が発表され、新たなキャラクターのデザイン画も公開されています。何が出ても『Gガンダム』だから、驚きこそすれ納得できない展開はないでしょう。
(加々美利治)







